福島第一原発事故の長期化に伴う混乱は、政局も巻き込んでいよいよ混沌としてきました。私たちの“安全”に関する切迫した問いの数々――「どの程度の放射線量であれば安全か」「いかなる基準を満たせば原発を再稼動しても安全か」「どの程度の予備電力があれば原発を止めたままでも安全か」をめぐって、いかなる見解を表明しても対立する陣営から(親原発/反原発に)“偏っている、中立でない”というレッテルを貼られる状態が続き、多くの人々が“結局のところ、なにが真実なのか皆目わからない”という不安に包まれています。本書はリスク社会学の第一人者ウルリッヒ・ベック(※)による、そのような状況を予見していたともいうべき講演の記録です。 著者ベックの議論は一般に、純粋な自然災害でありその発生に人間は責任を負わない「危険」(danger)と、逆に人間自身の営みが関与するがゆえに、人間が責任を負わなければならない「リスク」(ri
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