■低税率より秘匿性が問題の本質 本書はタックス・ヘイブンを、「低税率国」としてよりも「守秘法域」と見るべきだと主張する。たしかに税率の低さは問題だが、租税回避が可能なのは、「パナマ文書」や「パラダイス文書」が暴いたように、あらゆる情報がそこで秘匿されるからだ。 タックス・ヘイブンを利用する企業は、この秘匿性ゆえ、母国の民主的統制、規制、課税、そして情報公開要求から逃れ、企業秘密を保持することで競争相手への優位性を確保する。著者はこの秘匿性が、各国の民主主義と財政基盤を掘り崩し、公正な競争を歪(ゆが)め、貧富の格差をいっそう拡大させる点に、問題の本質がある、と鋭く指摘する。 著者らが開発に関わった「金融秘密度指数」は税率よりも、この秘匿性に焦点を当てた指標だ。この指標に基づく国際ランキングでは、なんと日本が2010年代以降、名だたるタックス・ヘイブン国を押しのけてワースト20にランク入りして
![書評・最新書評 : ダーティ・シークレット―タックス・ヘイブンが経済を破壊する [著]リチャード・マーフィー - 諸富徹(京都大学教授・経済学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/9e8465116137a0e714526130f12d419447138370/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F515e7Ks%252BYfL.jpg)