ブックマーク / honz.jp (255)

  • 核兵器よりもたちが悪い『人類史上最強 ナノ兵器』 - HONZ

    昆虫サイズの超小型ロボ兵器ナノボットによる毒殺攻撃。まるでSFのような話だが、超小型ナノ兵器の開発状況をつぶさに調べていくと各国がこのナノボットの開発に注力していることがうかがれる。2014年時点で米軍は重量1gにも満たない「ハエ型ドローン」の製作に成功している。しかも、これを偵察用に使うだけでなく、攻撃を加えられる兵器にするよう開発中という。SFのような世界はそう遠くない将来に実現化しそうな勢いだ。 公表されている情報によると、中国ロシアアメリカドイツは数十億ドルを投じてナノ兵器の開発競争を繰り広げているという。日頃、核兵器やミサイルの話題がニュースになりがちだが、水面下では「最強のナノ兵器を手にする国が新時代の超大国となる」という新しいパラダイムに向けての軍拡競争が激化しているといっても過言ではない。 この新世代の兵器を一般人にも分かりやすく解説してくれるのが書である。ナノ兵器

    核兵器よりもたちが悪い『人類史上最強 ナノ兵器』 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/27
    毒性ナノ粒子とか、使いどころに欠けるような気がするが…
  • あなたがたった今、これを読んでいるという途方もないありえなさ──『生命進化の偉大なる奇跡』 - HONZ

    書『生命進化の偉大なる奇跡』はイギリスの解剖学者・人類学者であるアリス・ロバーツによる、人類進化の中でも特に解剖学・発生学を中心としたサイエンス・ノンフィクションだ。彼女はBBCで人類進化をテーマとしたいテレビシリーズにも出演していたり、幅広く一般に向けてわかりやすい科学情報の発信を行なっているが、書もその成果のうちの一冊である。 中心となるのは、受精卵という一個の細胞がひとりのヒトへと成長を遂げる”奇跡”としか言いようがない事象の背後にある具体的なプロセスと、どのような歴史の上に我々の手が、足が、肺が、脳が、腰が、形作られてきたのか、それは元を辿ればどんな生物からの遺伝なのか──という生命進化の軌跡を辿る旅である。具体的な構成としては、精子が子宮頸管をのぼり、子宮腔を通って卵管に入る受精プロセスからはじまって、約一週間ごとに人体がどんな形成過程を辿るのかを、頭蓋骨、脳、脊椎と体節、な

    あなたがたった今、これを読んでいるという途方もないありえなさ──『生命進化の偉大なる奇跡』 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/25
    保健体育の本(違う)/ナックルウォークの方が新しく始められたものってのは、また、逆転の発想だな。
  • 『ジュエリーの世界史』宝石商という商売 - HONZ

    ”宝石屋”と”宝石商” 宝石が嫌いな女性はいないが、宝石が好きな男性もほとんどいない。これが宝石商にとっては頭痛の種だ。私事になるが、私も宝石商を50年以上やっている。仕事上の、あるいは私的な友人でも、話が彼等の夫人や令嬢に及びはじめると、どうも私のひがみかもしれないが、彼等が思わず身構えるのが、ピンとくる。女房子供に宝石屋を近づけると、ろくなことがない。どうもあいつらは、わけの分からないものを、とてつもない値段で女共に売りつける連中だ、と男性諸公はかたく信じているようだ。とんでもない誤解である。 一流宝石商の言い分はこうだ。私たちは、女性がどうしても欲しいとおっしゃるものをお届けしているだけで、三拝九拝して買って下さいと申し上げているのではない、と。 事実、歴史に残る大宝石商は皆、商売人としては実に態度の大きな男ばかりだった。そのかわり、自分の職業と売る物については、買い手以上の愛着と、

    『ジュエリーの世界史』宝石商という商売 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/24
    そりゃ、男性は警戒するじゃろw/大きい企業がないというのも、おもしろいな。金持ち相手に信用で商売するタイプか、安手品を中流階層に広く売るか、2タイプに分かれるのかね。
  • 『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く - HONZ

    その男は酒もタバコもしない。ギャンブルに手を出すこともない。刺激物はコーヒーすら飲まないのだ。キリスト教の教会に通い、積極的思考(ポジティブシンキング)を実践することで世界一の大国アメリカで人もうらやむ成功を手にした。この禁欲的に思える男の名前は、ドナルド・トランプ。そう、現アメリカ大統領のトランプには奇妙な信心深さがある。 テレビから伝わるトランプのイメージは、禁欲や信心深さという言葉からは対極にある。政敵を口汚く罵り、派手な女性遍歴を誇るトランプに、どのように禁欲的な性質が内在するのか。遠く日から眺めていると、その存在は矛盾だらけの奇妙なものに思えてくる。しかし、『反知性主義』でトランプ現象を予測したとも言われた著者の森あんりは以下のように、トランプの存在は特異なものではないと説く。 トランプの奇妙な信心深さは、アメリカ的なキリスト教の文脈ではけっして特殊な例ではないということです

    『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く - HONZ
  • 『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!? - HONZ

    「一般企業もマフィアもやっていることは同じですよ」 もしあなたが真面目なサラリーマンで、誰かに面と向かってこんなことを言われたとしたら、どんな反応を示すだろうか。おそらく内心ムッとするはずだ。そして「とんでもない! 反社会的集団と企業を一緒にしないでください」とかなんとか反論のひとつも付け加えながら、納得のいかない表情を浮かべるのではないだろうか。 だが書を読んだ後でも同じような認識でいられるかはおおいに疑問だ。もしかしたら笑顔で「ですよねー」と同意すらしているかもしれない。なにしろ書によれば、斯界にその名を轟かす麻薬王は、誰もがみな名経営者だというのだから。 『エコノミスト』誌でエディターを務める著者は、ラテンアメリカで麻薬関連の取材をするうちに、麻薬ビジネスのあり方がグローバル企業のそれと酷似していることに気づく。実際、麻薬ビジネスの規模はグローバル級で、書によれば麻薬ビジネス全

    『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!? - HONZ
  • 『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』「民族協和」を目指した学生たち - HONZ

    日中戦争当時、石原芫爾が満州事変を首謀し、満州国を建設後、彼が次に目指したのは将来国を担っていくエリートの育成である。満州国の最高学府として建設されたのが「満州建国大学」。満州国が当時国是として掲げていた「民族協和」の実践場として、日人の定員を半分に制限し、中国、朝鮮、モンゴル、ソ連のなど様々な国から学生を募った。 書は、著者が建国大学卒業生たちを訪れ、大学時代の様子や卒業後の人生についてインタビューしたのをまとめたものである。建国大学が傀儡国家の最高学府であったため、敗戦後多くの資料が焼却されて残っていない。また、卒業生も85歳以上で高齢である。記録を残すには今しかなかった。著者が彼らの個人史と建国大学の歴史を後世につないだ貴重な一冊である。 「5つの民族が共に手を取り合いながら、新しい国を作り上げよう」という「五族協和」のスローガンのもと、戦前戦時中には考えられなかった「言論の自由

    『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』「民族協和」を目指した学生たち - HONZ
  • 『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた - HONZ

    今年もたくさんの新しいと出会い、様々な刺激をもらってきた。だが今年読んだの中で、最も印象に残ったものを挙げよと言われれば、それは「再会」した一冊になる。それが書『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』だ。 事件の詳細に関する記述はあまりにも凄惨で、このが置いてある棚の一角は邪気が漂っているように感じるほどである。数年前に奥の方へと封印したはずのこのを再び手に取ったのは、偶然目にしたドキュメンタリー番組がきっかけであった。 北九州・連続監禁殺人事件はきわめて複雑な事件であるものの、松永太という天才殺人鬼が全ての元凶である。内縁のとされる緒方純子は、加害者でもあり被害者でもあった。松永は緒方の家族ら7人を同じ部屋に監禁し、事の制限、睡眠の制限、排泄の制限、そして通電による制裁を加えた。その後一家は、家族ら自身の手によって次々と殺害。しかも遺体はバラバラに解体され、人知れず捨て

    『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた - HONZ
  • オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活 - HONZ

    「ことりはとってもうたがすき かあさんよぶのもうたでよぶ♪」 子どもの頃、大好きだった童謡。ただ……ふと思う。小鳥が歌うのって、「好き」だからなの? 早朝、森に降りそそぐ小鳥たちのコーラス。聴く側もさわやかで心地よいけれど、小さな体に似合わぬ大きな声で精いっぱい歌う姿を見ていると、やっぱり「歌が好き」なんじゃない?という気がしてくる。 でも「歌う」ことは、わざわざ天敵に自分の居場所を教えるようなもの。つまり彼らの歌は「命がけ」。「好き」だけでは説明できない理由があるはずだ。 ここで、ルビオに登場してもらおう。ルビオはオスのクロツグミという鳥で、書の著者が観察していた個体である。書は「小鳥にとって歌とはなにか」、著者自身の観察成果を中心に教えてくれる。そこから見えてくるのは、意外にも「人間くさい」小鳥たちの私生活。 で、そのルビオなのだが、 クロツグミは独身と既婚とでこんなにも歌い方が変

    オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/13
    生存可能性を高めるには、いろいろな性質の子を作りたいだろうからなあ。オスも、メスも、合理的な行動ではある。人間も、浮気しまくったりするわけだし、托卵もやるしな。
  • 僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』 - HONZ

    奇僧はまだしも、快僧……? 道鏡、西行、文覚、親鸞、日蓮、一遍、尊雲(護良親王)、一休、快川、天海……お坊さんの名前が10人ずらり。共通点は、歴史の教科書で名前を見たことがあること、それから人物がとんでもなくて、おもしろいこと。この10人について、それぞれコンパクトに評伝がまとめてある。醍醐味は、読み通すと日史が俯瞰できることだろう。 著者の今井雅晴さんは、1942年生まれ。日史学を学び、茨城大学や筑波大学大学院の教授として、日中世史や日仏教史を専門にしてきた。海外の大学で教える経験も多かったようだ。現在は筑波大学名誉教授。特に、時宗の一遍や、浄土真宗の親鸞についての著作が多い。親鸞は、思うように生きられなかった京都から42歳のときに新天地、関東へ入る。この東国での活動に重点をおいた親鸞伝が近著となるそうだ。 また、この『日の奇僧・快僧』自体は、1995年に講談社現代新書として同

    僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/13
    「知的なアウトサイダー」としての中世の僧侶。ラインナップが豪華だな。
  • 『運慶への招待』一門を纏める仏師 - HONZ

    2017年11月、東京国立博物館にて開催された運慶展は入場者数が60万人を超え終了した。 運慶といえば平安末期~鎌倉時代にかけて活躍した仏師だ。東大寺南大門の金剛力士立像はその代表作だが、全身で8m以上もある。重さは7t。制作年は1203年と制定され、つまり800年が経過しているが、今だもって見る者を畏怖させる。当時の人達は阿吽の仁王から凝視されたら、度肝を抜かれただろう。 それにしても驚くのは、仁王2体を69日間で完成させていることだ。もちろん運慶ひとりではなく、慶派工房という集団で制作している。運慶はルネサンスの工房よろしく、漆や金箔を貼る塗師や採を施す絵仏師など分業制の総監督でもあり、高い統率力もを持ち合わせていた。 書は運慶の入門解説書である。運慶関連のは展示会のガイドブックを含め多数出版されているが、書は実際の作品をフルカラーで眺めながらも見どころを抑えている。B5サイズ

    『運慶への招待』一門を纏める仏師 - HONZ
    taron
    taron 2017/12/10
    僧侶の最高位まで昇進したということは、慶派仏師集団をまとめる運慶への評価がそれだけ高かったということか。
  • 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点 - HONZ

    選挙があると思い出す光景がある。ずいぶん前のことだが、番組でお付き合いのあった関係で、ドクター・中松の街頭演説を見に行った。場所は下北沢駅の北口だった。 ジャンピングシューズをはいたドクターが登場するとたちまち人だかりが出来たが、聴衆はビヨ~ンビヨ~ンと跳ねるドクターの動きにつられて顔を上下させるばかりで、せっかくの演説を誰も聴いていないんじゃないかと思った。けれども皆とても楽しそうだった。子どもたちははしゃぎながら一緒に跳ねているし、気がつけばちょっとした祝祭空間のようなものが駅前に出現していた。 選挙には独特の魔力があるという。そこは人間の性が露わになる場所だ。必死でお願いする候補者に対して、信じていた人が見向きもしてくれなかったり、かと思えば見ず知らずの人が手を差し伸べてくれたりもする。 選挙は祭りであり、候補者にとっては人生の喜びや理不尽さを知る場でもある。だからこそ選挙は、いち

    『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点 - HONZ
    taron
    taron 2017/11/30
    本当に供託金制度は、民主主義を破壊しているよなあ。あれ、違憲なんじゃなかろうか。
  • 『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙 - HONZ

    9.11後、アフガニスタンに派兵したアメリカは、パキスタンとの国境地帯で反乱の急増に悩まされていた。そこで2006年夏、この急峻な山地帯に前線基地を点々と連ねて敵の補給線を分断するとともに、現地の村人には不足している物資を供給し人心を勝ち取るという作戦を立てた。これにより谷間の川沿いにくねくねと伸びている狭隘な道沿いに十数箇所の前哨基地が作られていった。奥へ奥へと進んでいった最後の前哨が「キーティング」と呼ばれる場所だ。だがこの前哨はとんでもない代物だった。 四方を切り立った山に囲まれている。斜面には花崗岩の露頭が点々とあり、木々は生いしげり、敵は隠れ放題だ。一方そこから見下ろされる「キーティング」の中にはほとんど隠れる場所がない。ヘリコプターの降着地帯は川を隔てたところにあり、橋を渡らなければ行かれない。最も近い米軍基地から車両でこようと思えば一しかない4メートルにも満たない幅の道路を

    『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙 - HONZ
    taron
    taron 2017/11/24
    よく考えると、先進国ではタリバン側からの肉声が全然聞こえないんだよなあ。/陣地内まで突入されて、よく全滅しなかったな。上から撃たれ放題、状況も分からない状況って、かなり詰んでると思うが。
  • 白いご飯は味がないから苦手?!『残念和食にもワケがある』 - HONZ

    主婦44歳 主婦の昼は残り物の煮物、キムチ、紅茶、ご飯。「事を中断するときには、お箸は刺しておく」家庭。夫の事写真も主婦の事写真も、お箸はご飯に刺し立てて撮影している。ラーメンやうどんなどの麺類でも、同様。 幼いころ怒られて教えられた記憶がよみがえる。「お葬式の時にすることだから絶対やっちゃダメ」というのはもはや常識ではなくなってしまったのだろうか? 書は「ドライブ調査」に基づいて考察された、現代の日卓にのぼる和の実態である。たくさんの写真とインタビューから描き出される姿に、あなたは驚くだろうか、それとも何とも思わないだろうか。 データの基となる「ドライブ調査」とは何か。 調査対象は1960年以降に生まれた、首都圏に在住する、子どもを持つ家庭の主婦である。卓を定点観測するが「事や「品」の調査ではなく、現代の家庭のあり方や、家族の関係を明らかにするのが目的だ。

    白いご飯は味がないから苦手?!『残念和食にもワケがある』 - HONZ
    taron
    taron 2017/11/20
    現代の食生活を、赤裸々に調査した本。しかし、ご飯に箸を立てる「立て箸」が普通に行われているのは、ビビる。タブーじゃないのか…/継続的な調査で、複数の本がでている。読もうと思いつつ…
  • 『全員死刑』父も母も兄も弟も死刑確定 - HONZ

    2010年11月に刊行された『我が一家全員死刑』(コアマガジン、後にコア新書で再刊)は衝撃的な一冊であった。「人は見た目が9割」ならば確実にお近づきになったらヤバそうな4人の家族の顔写真が表紙にならんでおり、実際、見た目通りヤバかった北村実雄、真美、孝、孝紘の4人は強盗殺人の罪などに問われ、全員死刑が確定している。 書は、次男の孝紘の獄中手記を中心に構成された『我が一家全員死刑』に加筆修正し、映画化にあわせて文庫化したものである。表紙に顔写真こそ並んでいないが、読み直しても彼らの行き当たりばったりで自己中心的な犯行には怖さしか感じない。 彼らがどのような犯行に及んだのか。大牟田4人殺害事件と聞けば思い出す人もいるだろう。2004年9月18日に家族四人で共謀し、知人の高見小夜子さんを絞殺。その後に帰宅した高見さんの長男とたまたま居合わせただけのその友人を拳銃で撃つなどして殺し、3人の遺体を

    『全員死刑』父も母も兄も弟も死刑確定 - HONZ
    taron
    taron 2017/11/13
    頭悪すぎだな。よく組長が務まったものだ。/ヤクザと高利貸しのグループか。
  • 『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ

    「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物を思い浮かべてほしい。大西洋を挟んで、サルはアフリカ大陸にも、南アメリカ大陸にも生息している。また、「走鳥類」と呼ばれる飛べない鳥たちは、南半球の4つの隔たった地域に分布している。さらに、ガータースネークはメキシコ土で見られるが、そこから海で隔てられたバハカリフォルニア半島の南部にも生息している。 そのように、系統的に近しい多くの生物が、海などの障壁で隔てられた、遠く離れた地域に生息している。しかしそうだとしたら、彼らはいったいどうや

    『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ
    taron
    taron 2017/11/12
    燃費が悪い哺乳類が、長距離を航海するのは厳しいと思うが。著者はどんな説明をつけたのだろうか。みすず書房だから、普通に高そうな本。/日本の生物群だと、分断分布で説明できているパターンが多いが。
  • 『食と健康の一億年史』 世界を食べ、食の過去を知り、ヒトの未来を考える - HONZ

    自然人類学を専門とする著者が、未だ見ぬを求めて世界中を旅し、ヒトの進化を軸に歴史を振り返る一冊だ。伝統的な昆虫を探してタイやベトナムへ飛び、偶然辿り着いたインド西海岸では激辛カレーに火を吐き、学位論文調査のために訪れたパプアニューギニアではオオコオモリをむさぼる。自然体で現地の人々と触れ合う著者の観たもの、感じたこと、何よりべた物が実に軽やかな文章でつづられており心地が良い。明日にでもふらっと知らない街に出かけ、たまたま見つけたレストランに入りたい気持ちにさせてくれる。 著者をの旅へと誘ったのは、こんな疑問だ。 現代に数多くの健康の問題が浮上してきたのは、祖先が守ってきた習慣やライフスタイルを変えたことや環境の変化が原因ではないか このでは、世界中を旅して得られた経験に、にまつわる最新の科学的な研究成果を織り交ぜることで、ヒトの祖先が何をどのようにべていたのかを明らかに

    『食と健康の一億年史』 世界を食べ、食の過去を知り、ヒトの未来を考える - HONZ
  • 『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか - HONZ

    実際にテロ組織に加入しようとする若者を引きとめたり、社会への復帰を支援したりといった活動を行う「イスラム系セクト感化防止センター(CPDSI)」の創設者によって書かれた1冊だ。 著者はセンターを創設した2014年4月から2015年末までに、1134人の若者を支援してきた。活動の現場で目の当たりにした事例と、得られた知見がまとめられたのが書である。 著者らは相談者である親と連携し、子どものパソコンの中身や録音された電話の通話内容を調べ、親子との会話内容なども分析し、組織による洗脳や取り込みのプロセスについて事例を収集してきた。 子どもが過激思想に感化されていくことに困り果てた親たちの相談を受けてきた経験から、組織に取り込まれつつある若者の家庭での振る舞いが、どのように変化していくのかについて細かく書かれている。 洗脳が進むにつれ次第に、若者たちは組織が説くところの「宗教的実践」に従い始める

    『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか - HONZ
    taron
    taron 2017/11/01
    何となく日常に不満を感じている人間の中二心をくすぐるわけか。そりゃ、効果的かもなあ。この種の洗脳技術って、どの程度継承されているのかね。/この種の陰謀論って、かなり欧米的に感じるが。
  • 『ウォークス 歩くことの精神史』めくれば、歩きたくなる本 - HONZ

    原書のタイトルは「Wanderlust」、旅への渇望という意味を持つ。著者レベッカ・ソルニットの代表作であり、著者自身が旅への渇望を持つ一人である。著者の名前が日で知られるようになったのは、著作『災害ユートピア』が、2010年という運命的なタイミングで出版されたためである。 人生をかたちづくるのは、公式の出来事の隙間で起こる予期できない事件の数々だし、人生に価値を与えるのは計算を越えたものごとではないのか。田園、および都市の徒歩移動は二世期間にわたって、予期できぬことや計算できぬものを探りあてる第一の方法であり続けた。それがいまや多方面からの攻撃に曝されている この二世期間で起こった「歩くこと」とそれがもたらしたことの歴史、そして、歩くことが置かれた不利な現状を、あらゆる分野から情報を狩猟して一冊のとしてまとめあげた。思索と歩くことの関係、歩行と文学、レジスタンスとしての歩行、庭園と迷

    『ウォークス 歩くことの精神史』めくれば、歩きたくなる本 - HONZ
  • 『人を襲うクマ』すべて自己責任、なのか? - HONZ

    大正4年に北海道の開拓集落で死者8人を出した、三毛別ヒグマ襲撃事故。昭和45年に大学生のワンゲル部員3人が亡くなった、日高山脈でのヒグマ事故。記憶に新しいところでは、昨年5月に秋田県鹿角市で起きた4件のツキノワグマによる死亡事故。人とクマとの軋轢、その歴史は長い。 だが、書でも「クマが人を襲う理由も、99%以上はクマが自分自身の安全を確保するための防御的攻撃である」と解説されているように、上記のようなケースは例外中の例外である。それでも毎年、クマによる人身事故は発生するし、それがネットニュースなどで流れるたびに、コメント欄には「被害者の自己責任論」が投稿される。 しかし、書を読了後も、すべての事故を「自己責任」と言えるだろうか――? 書は、上述の日高山脈での事故の詳細や、クマをよく知る猟師の話、実際に襲われた人たちへのインタビュー、専門家による解説を柱に展開される。「無知で無謀な行為

    『人を襲うクマ』すべて自己責任、なのか? - HONZ
  • 『海賊の世界史 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで』海賊は社会を映す鏡である。 - HONZ

    海賊ははるか古代より存在する。様々な文化、様々な海域、様々な政治状態、そして様々な民族によって海上での略奪行為は行われてきた。海賊と一言でいっても、その背景には多くの違いがある。だが、古代から現代、洋の東西を問わず、海賊には相反する二つの見かたがある。それは書帯にも書かれているように「自由を求めるヒーロー」としての姿と「人類共通の敵」としての姿だ。 例えば「歴史の父」と言われる古代の歴史家ヘロドトスはサモス島の支配者にして海賊王のポリュクラテスを「海上制覇企てた最初のギリシャ人」と呼びその志の高さを賞賛している。一方で古代ギリシャの哲学者キケロは海賊を人類共通の敵として弾劾している。 書は時代や人によって常に2つの相対する側面を持つ海賊を古代から現代まで駆け足で概観できる作品である。第1章の「海賊の始まり」では古代世界、特に地中海を中心に海賊の成り立ちから、ローマ帝国との関わりを眺める

    『海賊の世界史 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで』海賊は社会を映す鏡である。 - HONZ