2023年10月19日12:50 カテゴリ本 万物の黎明:人類史を根本からくつがえす 今年のベストワン。というか10年に1度ぐらいの驚くべき本である。グレーバーは2020年に死去したので、残念ながらこれが最後の著書になったが、本書はヨーロッパ中心の歴史を根本からくつがえす新しい人類史の始まりを告げている。 社会をホッブズのように「万人の万人に対する戦い」とみるか、ルソーのように「高貴なる未開人」の堕落とみるかは、人生観の違いだろう。最近は政治史を戦争の歴史として描くフクヤマや、文明を暴力からの脱却として描くピンカーのようなホッブズ派(性悪説)が主流である。 彼らの議論の出発点は、石器時代の人類の最大の死因は殺人だったという考古学のデータである。ホモ・サピエンスは20万年前から戦争を繰り返しており、平均15%が殺されたという。文明を築いたのは、王が多くの民衆を支配する国家だった。 本書はこの