ゲノム情報にもとづく医療の分野は大きく広がっている。その中で最も患者・家族のもとに成果をとどけられた分野の一つが、難病・希少疾患のゲノム医療である。難病・希少疾患は、個別の疾病としてはまれなものであるが、試算によっては、その数は10,000以上に上る。総数としては、日本では指定難病症例だけでも100万症例を超える「ありふれた疾患」と言える。他のゲノム医療分野と同様に、この分野においてもバイオインフォマティクスは中心的役割を果たしている。エクソーム解析・全ゲノム解析といったゲノム網羅的な解析は強力ではあるが、現状における診断率は概ね40%台にとどまっている。本稿ではこの診断率を向上させるための方策、現状の難病・希少疾患解析ワークフローの概要とともに、ワークフロー改良のための新たな試み、そして今後の社会実装について概説する。