領土の保全を自国の「核心的利益」と位置付ける中国。これまで日本と領有権を争う尖閣諸島(中国名・釣魚島)が問題になると、感情的反応を繰り返してきた。10年の漁船衝突事故後も、日本側が島に独自の名前を付けるとすぐさま中国名を付け返した。 ところが東京都の石原慎太郎知事が16日、ワシントンで「東京都が尖閣諸島を購入する」と突然ぶち上げたにもかかわらず、中国政府の対応は外務省が「日中関係を損なう」といった控えめなコメントを出しただけ。いつもは大騒ぎする中国版ネット右翼「噴青(フェンチン)」も比較的静かだ。 重慶市で起きた政治スキャンダルが共産党最高指導部を揺るがしていることも、「沈黙」の理由の1つだろう。ただそれだけではない。実は中国は今、もう1つの領土紛争で忙しいのだ。 4月初め、フィリピンが実効支配する南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近で操業していた中国漁船をフィリピン海軍の艦船が捜