今や誰もがキャンセル・カルチャーについて論じるのに飽き飽きしている。そろそろ私たち研究者が議論に参加してもいい頃だろう。最近、イブ・ンの“Cancel Culture: A Critical Analysis”『キャンセル・カルチャー:批判的分析』を興味深く読んだ。この本はキャンセル・カルチャーにそれほど批判的というわけでもなかったが、この現象の歴史を提示している点で有益だった。ただ残念なことに、この本は事例を豊富に載せているだけで、キャンセル・カルチャー現象の明確な定義や説明は提示していない。そこで本エントリではこの空白を埋めるために、根底にある社会的ダイナミクスの分析に基づいて、キャンセル・カルチャーのシンプルな理論を提示したい。 議論を始める上でまず明確にしておくべきは、キャンセル・カルチャーの起源が政治的なものでも文化的なものでもないということだ。キャンセル・カルチャーは、ソーシャ
私には「庇護者」がいた。時間を食う割に何の役にも立たない学内の委員会の委員の候補として私の名前が挙がるたびに、「フランシスには他にもやらなきゃいけないことがたくさんあるんです。誰か他の人に声をかけてみましょう」と(私の知らないところで)発言してくれていたのだ。そんなふうにして私を庇(かば)ってくれていたなんて、つい最近まで知らなかった。面倒な委員会に出なくちゃいけない義務から突如として解放されて、研究に割ける時間が不思議と増えたのには気付いていたのだけれど。 『Lean In』(邦訳『LEAN IN(リーン・イン):女性、仕事、リーダーへの意欲』)を読んでいたら、シェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)が似たような経験について「庇護者」としての側から想起していた。 Google社にいた時に一緒のチームで働いていた仲間の一人に、若くて才能豊かな女性がいた。その女性には目をかけ
画像の出典:https://www.silhouette-ac.com/detail.html?id=159937 チャルディーニ(Robert Cialdini)が手掛けた実験の一つでは、被験者たちにグリゴリー・ラスプーチン(Grigori Rasputin)――ロシア皇帝であるニコライ二世の相談役も務めた怪僧――の短い伝記を読んでもらった後に、ラスプーチンについてどう思うかが尋ねられた。その伝記では、ラスプーチンのことが嘘つきで人を操るのが上手い悪党として描かれている。ただし、被験者の半数に対しては、ラスプーチンの誕生日が書き換えられたバージョンが手渡された。ラスプーチンの誕生日とそれぞれの被験者の誕生日が同じになるように書き換えておいたのだ。さて、どういう結果が得られたかというと、ラスプーチンと「同じ誕生日」の被験者たちは、ラスプーチンに対して好意的な評価を下す可能性が圧倒的に高かっ
本稿では、ナイジェリアでキリスト教徒とムスリム(イスラム教徒)との間で続いている宗教間対立の根底にあるのが何なのかを探るために、理論的に精密に設計されたフィールド実験をナイジェリアのジョス市で試みた。具体的には、キリスト教徒とムスリムにペアになって協調ゲーム [1] … Continue readingをプレイしてもらったが、協調しなかったケースの76%が(相手がこちらに危害を加えてくるのではないかという)「恐怖」ゆえであり、残りの24%が(相手を痛めつけてやれという)「憎悪」ゆえであることが判明した。さらには、外集団(よそ者)に属する相手への恐怖ゆえに協調しなかった被験者たちは、自分が属する集団(内集団、身内)に対して外集団のうちのどのくらいの割合が憎悪を抱いているかについて過大に見積もりがちだった。すなわち、思い過ごしで相手に恐怖を抱いていたわけである。次いで、フィールド実験で得られた
多産の家庭は大学を無償化、と言うアイデアが「少子化対策」として出てきたが、 https://digital.asahi.com/articles/ASRD67KLKRD6UTFL011.html これは 少子化対策にはならない。(有効ではない)格差を広げる政策であるため、むしろ非婚化を促進し逆効果ですらある経済対策としても、実質大学への補助金なのに、大学側の放漫経営を抑止する方策がないため筋が悪いといえるので、最低でももう少し工夫をしてくれという話をする。 本質的に経済対策と位置づけて、少子化対策は別枠で行う助成金は、子ども側の条件はしだが、大学側には条件を与えて大学側に交付金として出すこと(助成金を受けた分だけ値上げなどの監視) 貧富の格差を是正するために、子どもなしの低所得層にも支援を行うこと 既婚世帯・既に子がいる世帯への支援は少子化対策として有効ではない 簡単に言えば、少子化の主因
「母に対してはもう諦めの気持ちです」 「妻とはまともな会話ができなくなり、つらいです」 親が陰謀論にのめり込んだという家族を紹介した番組「フェイクバスターズ」の放送後、同じような声がNHKの投稿フォーム「ニュースポスト」に数多く寄せられた。 陰謀論とは、「この世界が闇の組織に牛耳られている」など、一般的に「物事の背後には誰かの陰謀や別の意味がある」などとする考え方で、実証するのも否定するのも難しい。 何を信じるかは個人の自由だが、詳しく話を聞いてみると、身近な家族に大きな負担が生じ、さまざまな悩みを抱えていることがわかってきた。 (科学・文化部記者 絹川千晴) 40代のあきみさん(仮名)は、離れて暮らす60代の母親が陰謀論にのめりこんだという。 きっかけは新型コロナの流行だった。 当初は家族を心配し「アルコール消毒すること!マスクが売ってなかったらこっちから送るよ」とメールしてきていた母の
最近見つけた現象で既に論じられているかと思ったがちょっと解説が見つからなかったのでまとめておく。 手短に X(旧Twitter)クライアントで表示されるTwitterカードについてカードに表示されるドメインとは違うページにリンクさせる手法が存在する この手法は第三者のTwitterカードを利用することができる つまり悪用者は第三者のTwitterカードを表示させながら自身の意図するページに閲覧者を誘導することができる これはフィッシングの手法になりうる 見つけたツイート 以下のツイートはGoogle、Bloomberg、日経ビジネスのTwitterカードが添付されているがクリックするとそれらとは異なる情報商材サイトにジャンプする。リンク先に危険な仕組みはないと思われるがクリックは自己責任で。念を入れたい人は curl -L で。 PCブラウザでカーソルを合わせてもXの短縮URLサービスであ
子供の頃、あれは「老人は新しいことが記憶できず、昔のことばかり話すんだ」と予想してたんだけど違った なんか、記憶には距離感が無いんだと思った 1年前と5年前と10年前と15年前の記憶が並列に存在している感じ? そもそも記憶に距離感をもたせるのってどうやるんだろう? ・時系列で覚える ・◯◯はあの頃だから古いと認識する ・思い出せなさかげんで認識する ・雰囲気で認識する 結構難しいんだよね たぶんだけど、若者が記憶の距離感が正確なのって毎年イベントが多いからじゃないかな 小中高大、社会人、転職、とイベントが多いしそれに従って関わる人も変わるから 時系列が認識しやすい (あとは単純に量が少ないからとかもありそう) ただこれが30歳を超えてくるとほんとに距離感が薄れてくる、変化が乏しくて 最近は学生と話すときは、話す内容を考えて、その人が理解できるか考えてから話すようにしてる リーマンショック生
2021年に刊行されるやいなや、NHKをはじめとするメディアや著名識者が絶賛、ベストセラーとなり、サントリー学芸賞を受賞した『土偶を読む』(竹倉史人著、晶文社)。土偶は人ではなく、植物をモチーフにしている、という新説を提示したこの本は、土偶解釈の大胆さやユニークさとともに、専門家や専門知に果敢に挑戦したことが高い評価につながった。考古学の専門家ではない竹倉氏が、考古学の権威と闘うというストーリーが、識者や読者の共感を得たのだ。 この本へのいわば“アンサー本”が、今年、専門家の立場から出た。縄文時代をテーマにした雑誌『縄文ZINE』の編集人・望月昭秀氏と9人の考古学研究者らによる『土偶を読むを読む』(文学通信)である。望月氏らは、竹倉説が「皆目見当違い」であることを最新の研究に基づいて論証したうえで、自由な発想は歓迎すべきものだが、専門知には専門知の役割があることを示す。 視野が狭く難しいと
269回 『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える 2024年1月24日にKADOKAWAから発売される予定だった『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』(著・アビゲイル・シュライアー/監修・岩波明/訳・村山美雪、高橋知子、寺尾まち子)が発売中止になった。 未成年の性別違和問題に触れた本だが、海外では資料の取り扱いや聞き取り相手の選択に関する手法に問題があると指摘されたり(同書が大きく参考にしているリサ・リットマン氏の研究自体がサンプルの選択に関する問題を指摘されているのだが)、トランスヘイト本であるという否定的な評価もある本である。 発売告知後、日本語タイトルやキャッチコピーがトランスジェンダーに対する偏見や差別を煽るものであると問題視され、海外での否定的評価を踏まえた上で同書がトランス差別のヘイト本にあたるとしてX(旧Twitter)
「Well-being ダッシュボード」は、OECD Better Life Indexをベースに作成されているため、一見するとよく似た項目が含まれている[注6]。しかしよく見ると両者には小さくない違いがある。とくに以下の3つの点を指摘しよう。 第一の違いは、「主観的ウェルビーイング(SWB, Subjective Well-being)」の位置づけである。OECDのフレームワークでは、SWB(主観的ウェルビーイング)は、あくまで11ある領域のうちのひとつに過ぎない。しかし、内閣府の枠組みでは、「主観的ウェルビーイング」が他の領域よりも格上げされ、「<第1層>全体的な生活満足度(総合主観満足度)」として最上位の指標として位置づけられている。先に見たとおり、日本の「主観的ウェルビーイング」は国際的に見て決して高くないが、内閣府の指標群ではWell-being概念を代表するものと位置づけられ、
中国、国民の「感情を傷つける」服装の禁止を検討-法改正案公表 中国では、国民の感情を害すると見なされる服装を理由に人々に罰金や懲役刑を科す法改正の可能性を巡り、国民が懸念を示している。 全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会はこのほど、「中国人の精神に害を及ぼし、中国人の感情を傷つける」服装や発言を含むさまざまな行為を禁じることを検討中とする法改正案を公表した。どのような行為が15日以下の拘留または5000人民元(約10万円)以下の罰金に当たるのか、具体的には明記されていない。この改正案は今年の優先事項の一つに挙げられている。 法改正案は中国の習近平国家主席が就任以来10年強にわたり、インターネット検閲を強化するなど、市民の自由を締め付けてきたかを浮き彫りにしている。上海近郊の都市、蘇州の警察は昨年、公の場で日本の着物を着ていた女性を拘束した。中国は第2次世界大戦中の行動を巡り日
百万回以上言ってるんだが、ジョブ型もメンバーシップ型も、近代社会の発明物であり、ほっといたらそうならない使用者と労働者の関係をあるべき規範に従ってモデル化した労働社会の理念型に過ぎない。なので、どんな社会でも公共部門や大企業分野ではその社会の理念型に近いジョブ型やメンバーシップ型が存在している(とはいえ、そういうところでも現実は様々)けれども、中小零細企業になればなるほど、ワンマン社長の好き放題で運営され、あるべき労働社会の規範にはほど遠いという実態が増えていく。そういう点においては、ジョブ型もメンバーシップ型もあまり変わりはない。 何が違うかというと、労働組合や労働者のために頑張ってる人々が、そういうあるべき姿からかけ離れた姿をあるべき姿に近づけようと考えるときの、そのあるべき姿がどういうモデルなのかという点であって、ジョブ型社会では、ジョブもスキルもへったくれもなく勝手放題しているワン
『労基旬報』2023年11月25日号に「ジョブ型雇用社会への小さな一歩?」を寄稿しました。 もうかなり前のことなので記憶から薄れつつあるかもしれませんが、今年の3月30日に、労働条件の明示に係る労働基準法施行規則の改正が行われました。また、今年の6月28日には募集時の労働条件明示に係る職業安定法施行規則の改正も行われています。これら改正省令はいずれも来年2024年4月1日から施行されることになっています。こうした改正がどういう流れで導入されることになってきたのかをごく簡単に振り返ってみましょう。 まず、2012年末の総選挙で自由民主党が大勝し、第2次安倍晋三内閣が成立してすぐの2013年1月に規制改革会議が設置され、同年3月には雇用ワーキンググループが置かれました。同WGが示した検討項目には、解雇規制の項とは別立てで「勤務地や職務が限定された労働者の雇用に係るルールを整備することにより、多
板前 @itamaebenichi 少し昔ブログにに書いたお話:紙パック日本酒の出荷率はどれくらいか、ご存じでしょうか? 2010年の調べでは市場全体の36%が紙パック酒なのだそうです。 「大手が日本酒をダメにした」「戦前は純米酒だけだったのに三増酒のおかげで日本酒が堕落した」とお嘆きの諸兄が聞いたら憤然とするでしょう。 板前 @itamaebenichi 続き)しかしながら36%もの紙パックのお酒は、日本人を舌をだまして、儲けのために造られているわけではありません。市場が欲しているから造られるのです。 ビールは麦とホップだけで造られるべきである!とどれだけ主張しても、実際に売れているのは発泡酒であり第三のビールであるように、(続く)
フナと納豆のひと🔥(元マンボウ拾ったひと) @wormanago 細長い魚の分類学的研究してます。そのほか、民俗、川魚料理を中心とした聞き取り。これまでに食べた魚は728種。うまいもの、日本酒、カレー、そば、とんかつ好き。うた(B:休職中)。うなぎばさみ収集。用水路写真。石倉漁研究。うなぎ屋・川魚屋の箸袋収集。地方名。切り身。魚滋会。赤味噌とあんかけスパのことを悪く言うやつはダメ kirimitoryouri.blogspot.com/?m=1 フナと納豆のひと🔥(元マンボウ拾ったひと) @wormanago みなさんお気づきか分かりませんけど、コンビニ大手3社のフィルム手巻き海苔おにぎりから「焼き鮭」(ふつうのサケ)がなくなっています。今はみんな「紅鮭」に。今後の動向を注視していきます。
ゆう🇺🇸本気のアメリカ就職 @honkiku1 🇺🇸人同僚「日本人は何で24時間表記なんて使うんだ?」 僕「だって、9時から会議って言うだけじゃ、朝の9時か夜の9時か分からないだろ?」 🇺🇸「何言ってんだ!夜の9時から会議なんてするはず無いじゃないか!」 僕「え?」 🇺🇸「ん?」 僕&🇺🇸「……」 僕「でも、24時間表記の方が、数字だけで午前と午後がぱっと分かって便利だろ?」 🇺🇸「何言ってんだ!時計見るたびに毎回電卓を使えって言うのかよ!」 僕「え?」 🇺🇸「ん?」 僕&🇺🇸「……」 アメリカで24時間表記が広まらない理由、どうやらこの辺にヒントが隠されているみたいです😅 ゆう🇺🇸本気のアメリカ就職 @honkiku1 僕がアンバサダーを務める #WorkCircle というコミュニティアプリでは、このような外資系企業の内情が社名付きで赤裸々に語り合
ヨーロッパでは一度停止されていた徴兵制を、緊張の高まりによって再開する国が増えている。しかし、その多くは「兵役につかない」選択を個人に認めるもので、強制ではない。自発性を重視するリクルートは現代の主流であり、そこには強制的に大量の人員を集めても意味がないという考え方がある。 世界の緊張が高まるなか、どの国でも徴兵制をめぐる議論がある。しかし、かつての「成人男性一律の義務としての兵役」はもはや一般的ではない。国民の拒絶反応が強いからだけでなく、コストパフォーマンスに疑問が大きいからだ。 徴兵制の‘復活’? 近年のヨーロッパでは、一度停止された徴兵制を再開する国が目立つ。 ウクライナ(2014年)を皮切りに、リトアニア(2015年)、スウェーデン(2017年)、オランダ(2018年)、ポーランド(2022年)などがすでに兵役を再開する法令を可決し、ドイツ、ルーマニア、ラトビアでも議論が始まって
佐伯 順子(さえき じゅんこ、1961年2月14日 - )は、日本の比較文化学者。同志社大学教授。学位は、博士(学術)(東京大学・1992年)(学位論文「近代化の中の男と女 -『色』と『愛』の比較文化史」)。 母はオブジェ作家の佐伯統子[1]。 東京都生まれ、関西育ちで、箕面市立南小学校、神戸女学院中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校卒。学習院大学で堀越孝一にホイジンガを学び、東京大学大学院総合文化研究科では演劇研究を志して高橋康也に師事するが、修士論文『遊女の文化史』を刊行、以後は芳賀徹を師と仰ぐ。 能、歌舞伎のような芸能を中心として日本文学全般に詳しく、泉鏡花や樋口一葉に関する著書を出している。なお、学生時代にはカブキロックスの前身バンド「KABUKI ROCK 一番屋」に所属して能管を担当していた[2]。また自衛隊に体験入隊した経験もある[3]。 「聖なる遊女」論は、ユング心理学
文学通信|多様な情報をつなげ、多くの「問い」を世に生み出す出版社 日本語・日本文学の研究書を中心に、人文学書全般を刊行する出版社、文学通信のブログ。 文学だけにこだわらず周辺領域も含め、意欲的に刊行していきます。 出版活動と同様に、webでも積極的に活動することで、多様な情報をつなげ、多くの「問い」を世に生み出していきたいと思います。 〒113-0022 東京都文京区千駄木2-31-3 サンウッド文京千駄木フラッツ1階101 電話03-5939-9027 FAX03-5939-9094 info@bungaku-report.com インボイス登録番号:T4011501023591 2023年9月30日、ジュンク堂書店池袋本店で開催された『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波書店)刊行記念イベントでは、著者の小野寺拓也さん、田野大輔さん、そして『土偶を読むを読む』(文学通信)編著
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く