『あず☆らいず!!』第7話『大切なもの』 2018年11月19日 福岡に実在するバンド「AZLiGHTZ(アズライズ)」。 チヒロ(Vo.)、ナオプ(Dr.)、サナ(Gr.)、ノゾミ(Ba.)のメンバー4人は全員がアニヲタである。 フェス会場で共演バンドとケ...
ムハンマド、あまりに人間らしさにあふれているではないか。といえば、不謹慎になるのだろうか。抜群に面白い伝記であった。イスラームの開祖、より正しくは、アラブにおける唯一神アッラーの言葉をつたえた預言者ムハンマドの伝記である。その啓示は、クルアーン(コーラン)としてムハンマドの死後20年たって公式に編纂され、聖典となった。いかにたくさんの人が、クルアーンの朗読に圧倒されてイスラームに改宗していったかに驚かされる。 クルアーンの内容の一部が紹介されているが、どこがそんなにすばらしいのかがわからない。当時のアラビア半島における社会状況もあるのだろうが、どうやら、それ以上にクルアーンの美しい響きが重要らしい。だから、クルアーンはアラビア語でないとダメなのだ。YouTubeで聞いてみると、意味がわからなくとも心地よい。砂漠のような環境で、美しい調べにのって語られる、住みよい社会を目指す教えというのは、
作者:チャールズ・C. マン 翻訳:布施 由紀子 出版社:紀伊國屋書店 発売日:2016-02-25 タイトルの『1493』とは、コロンブスが新大陸から黄金の装身具やカラフルな鳥、先住民捕虜を携えてスペインへ帰国した年である。この年を境に、超大陸パンゲアが分裂してから2億年以上もの長きにわたって独自の生態系を育んだきた各大陸が、人類の手を介して再び出会うことになったのだ。コロンブス以前には、どのような生物にも大陸間を結びつけることは不可能であり、それぞれの大陸は規模の大きなガラパゴスのような状態だったともいえる。 コロンブスの大陸到達を契機として何十億年も隔てられていた生態系が急激に混ざり合う過程は「コロンブス交換」といわれる。コロンブス交換の影響の大きさは、食卓にあがる料理にもあらわれている。この交換がなければ、トマトもトウモロコシもジャガイモも、アメリカ大陸を飛び出してあなたの口に入る
『でっちあげ』というノンフィクションを知っているだろうか。詳しくは私のレビューをお読みいただきたいが「モンスターペアレント」という言葉ができたのはこの事件からだった。学校に対して理不尽な無理難題を突き付け、わが子可愛さに教師ばかりか教育委員会、果ては市や県にまでクレームをつけ、裁判にまで持ち込む。それが正当なものならわかるが、嘘八百を並べ立てていた事件である。 長野県の丸子実業で起こった「いじめ殺人事件」も、このモンスターペアレントが起こした事件であった。 2005年12月、軽井沢に隣接している長野県御代田町で丸子実業高校(当時)に通う高校1年生の男子が自殺した。母親は所属していたバレーボール部内部でいじめがあったことを苦にしていたと証言し、気持ちを書きとめていたノートには「いじめをなくしてほしい」という記述もあった。事実、夏から不登校が続いていた。少年には声が出にくいという障害があり、そ
日中戦争当時、傀儡国家・満州国の最高学府として設立された国策大学が「満州建国大学」である。満州国の将来の指導者たる人材の育成と、満州国の建国理念である「五族協和」の実践の場として、日本人・中国人・朝鮮人・モンゴル人・ロシア人といった様々な民族から選抜された若者たちが6年間寝起きを共にしながら切磋琢磨する。すべて官費で賄われ授業料も免除という条件の良さもあり志願者が殺到、2万人の中から選ばれた150人が入学を許されるという狭き門で、まさに彼らはスーパーエリートだった。 満州建国大学は「五族協和実践の成果」を国際社会に発信するための広告塔でもあった。国際化をうたいながら在校生はほとんど日本人だった各地の帝国大学とは違い、日本人は定員の半分に制限され、残りは各民族に割り当てられる。カリキュラムも日本語や中国語の他、英語・ドイツ語・ロシア語・モンゴル語等々自由に学ぶことが出来、禁書扱いになっている
世界最強国家アメリカで、最も影響力を持つのはどの一族だろう。20数年間で2人の大統領を輩出し、さらに3人目の大統領候補を送り出そうとしているブッシュ家だろうか。世界最大の石油企業スタンダード・オイルに始まり、金融や軍事関連企業を次々と傘下におさめ、政界にも強いコネクションを持つロックフェラー家だろうか。 夫婦で大統領となる可能性の出てきたクリントン家や世界一の大富豪として慈善活動を強力に推進しているビル・ゲイツなど、大きな力を持つアメリカ人の名前は数多く思い浮かぶ。ところが、左派系メディア『マザー・ジョーンズ』誌シニア・エディターである本書の著者は、Wikipediaの日本語版にも個別記事がなく、日本ではその名を知る人の少ないコーク四兄弟こそが、「現在のアメリカにおいて、最も影響力を持ち、強力で、人々の耳目を集め、嫌われている人たち」であるという。 コーク一族が所有・経営する非上場企業のコ
イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは本当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の本質。(HONZ編集部) 本書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、本書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と
深遠な海の中に身を沈めれば、無重力の浮遊感。 目の前には鮮やかな魚達が横切り、好奇心旺盛なイルカや色とりどりのサンゴ礁、人間よりも遥かに大きく愛嬌のあるマンタやジンベエザメなど。ダイビングは、陸上では味わえない世界を堪能できる。 一方、太平洋戦争時の旧日本軍の重要拠点であるミクロネシア連邦チューク州。旧トラック諸島と呼ばれたこの地は空襲により2日で壊滅した。現在、存在するのは戦火に撃沈した戦艦や商船。チューク島はいま大きく変化している。 本書はトラック空襲により海に沈んだ船にフォーカスした写真集だ。商船として生まれながらも、徴傭された軍用船や戦艦、米国のトラック大空襲で沈んだもの40隻余。それらを水中写真家である著者が9年の間撮影し、少しずつ記憶を紡いできた。 著者は水中写真家、古見きゅう。日経ナショナル ジオグラフィック写真賞にて優秀賞を受賞。世界を旅し、一年の3分の2は海に潜っていると
今週日曜日に行われた、HONZイベント@d-labo二子玉川。終了間際の質問コーナーにて、観客席にいた一人の眼光鋭い男性から『不健康は悪なのか』という本を紹介された。その男性の口からは、次々に知る人ぞ知る名著の名前が飛び出し、HONZメンバーもたじたじに。聞けば、スゴ本ブログでおなじみのdainさんであるという。イベント終了後すかさず交渉に入り、レビューを寄稿していただきました。(HONZ編集部) 食べようとするケーキを奪って「あなたのためだから」と言い放つ(終業ぎりぎりでドサッと仕事を渡すバージョンもある)。強く印象づける目的としては、このCMは大成功だ。心ざわつく嫌なメッセージとして、絶対忘れないから。人の為と書いて、いつわりと読む。これは、善意の皮を被せた、人をコントロールする言説だ。 本書を読み進めているあいだ、何度もこの「あなたのためだから」が頭をよぎる。おっぱい育児を推進する全
これまで歴史本や評伝にて部分的に語られるものの、日本の石油外交や資源開発の歴史について網羅的にまとめた書籍は、ほとんど存在しない。日本軍が石油を求めて東南アジアに武力進出していったことは歴史年表に記されてはいるが、誰がどういう経緯で進軍を決めたかや当時の資源開発現場を紹介する本はあまりない。太平洋戦争は石油の戦争といわれるわりに、私たちは事の顛末をきちんと理解していないのかもしれない。 そんな中、明治から現在までの日本の油田開発と資源外交に焦点をあてる本書は希有な一冊といえよう。これまで歴史に埋もれてきた数多くの物語を紡ぎだす良書である。しかも、歴史の表舞台に登場するプレイヤーの動向を紹介するだけでなく、そんな彼らを支えた人、場合によっては彼らにすら認知されていない現場の人たちにまでスポットライトをあて、日本のこれまでの資源外交と油田開発の歴史を振り返っている。 本書を読むと日本の石油政策
皆様、大変お待たせしました。クマムシ博士のデビュー書評@HONZです。これまでにもHONZでは自称・虫マニアたちが、変わった本を見つけてはしゃぎ回っておりましたが、ついに真打ち登場です。あのクマムシ博士も嫉妬した、甲虫版グラビア写真の奥深き世界をどうぞご堪能ください。(HONZ編集部) 「これまでの昆虫図鑑の概念を覆した」。本書のことを、こう紹介しても過言ではないだろう。従来の昆虫図鑑では体現できなかった、圧倒的な質感と光沢。本書では、各ページがひとつの標本箱、いや、宝石箱になっている。その中にそっと指を入れれば、掴めてしまいそうな、きらめく虫たち(実際に、本書に印刷された虫を本物だと勘違いし、一生懸命に指でつまもうとしていた幼児がいた)。 ページをめくるごとに、たしかな質量をそなえた昆虫たちが浮き出る。虫たちの容姿は、リアルを通り越して、セクシーな領域にまで達してしまっている。これだけの
『奴隷のしつけ方』と衝撃的なタイトルだ。著者はマルクス・シドニウス・ファルクスというようだ。古典なのだろうか。本書を手に取り、パラパラとページをめくると違和感を覚える。マルクス・シドニウス・ファルクスとは何者なのか。記憶の糸を手繰る。しかし、思い出せない。本書の帯には「何代にもわたって奴隷を使い続けてきたローマ貴族の家に生まれる。」とある。書店でスマートフォンを取りだし、検索してみる。ウィキペディアでも見つからない。謎は深まる。 答えを求めてページをめくる。翻訳者のあとがきを読んだとき、謎が解けた。 本当の著者はジェリー・トナーという男だ。解説者として表紙に名前がある。ケンブリッジ大学の古典学研究者のようだ。そう、著者とされるマルクス・シドニウス・ファルクスとは架空の人物だ。本書は古代ローマ帝国時代の奴隷という存在がどのようなものであったかを、架空の人物に語らせ、各章の末尾に本物の著者トナ
「日本に本格的なフランス料理がやってきたのはいつ、誰によってなのか」 そんな問題意識をもとに、ノンフィクション作家の著者は、料理に関する作品を執筆するチャンスをうかがっていた。当初は、1970年の大阪万博が転換期だったのではないかと仮説を立てていたそうだ。だが調べるうちに、日本のフランス料理界発展に大きく貢献したある料理人の存在が浮かび上がってくる。 その人物の名は、1927年にオープンした横浜・ホテルニューグランド初代総料理長、サリー・ワイル。ホテルオークラ東京の初代総料理長である小野正吉、日活国際ホテルの総料理長として活躍し、1964年の東京オリンピックでは選手村食堂の総料理長を務めた馬場久など、後に日本のフランス料理界を牽引する伝説の料理人たちがワイルの薫陶を受けていることからも、その影響の大きさが分かる。 しかし、そんな功績の大きさとは裏腹に、ワイルには謎も多い。フランス料理のレベ
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