「あなたが女性トイレを使うのはセクハラですよ」 経済産業省で働くMtFトランスジェンダー(※1)のA子さんは、ある日人事担当者からそんな一言を告げられた。職場でカミングアウトして女性として受け入れられるようになって、すでに3年が経っていた。A子さんは人事担当者から「性同一性障害の人の権利よりも女性の権利が優先されるんです」とも告げられた。 2019年12月12日、A子さんを原告とした裁判に判決が下された。それは、トランス女性に対するトイレ利用制限措置は違法だとする初の司法判断だった。この記事では、訴訟にあたってのA子さんの思いについて述べた上で、冒頭の問題について論点を整理し、最後に未来の社会像を考えていきたい。 (※1)出生時に男性と割り当てられたが、性自認が女性の人のこと。 A子さんがこっそりと妹の服を着始めたのは、小学校の中頃からだった。小学校高学年になると、毎晩お祈りをするようにな