東日本大震災の被災地で高台移転事業が本格化する中、宅地などの造成工事で出てきた遺跡の発掘調査が進んでいる。多様な年代の遺跡が見つかり、資料の乏しい中近世の空白を埋めるほか、奥州藤原氏との新たな関係性を示す出土品もあり、歴史の通説を覆す可能性も指摘されている。津波で大きな被害を受けたふるさとの歴史を掘り起こす思わぬ副産物に被災者らの期待も高まる。(高木克聡) 岩手県大船渡市三陸町で昨年12月中旬、発掘された戦国時代のものとされる城館「小出館(こいでたて)」の遺跡発掘調査の説明会が開かれた。 市によると、遺跡からは、鉄粉など製鉄施設の跡や高価な陶磁器、銅銭などが発見され、担当者も「交易などで富を得た豪族がいたのでは」と推測する。 大船渡市をはじめとする県沿岸部の三陸地方では、めまぐるしく勢力図が塗り替えられた戦国時代前後の文書などがほとんど残存していない。三陸町でも南北朝時代以降から江戸時代