「メキシコからの移民は麻薬密売人や強姦魔だ」「米墨国境に壁を作る」……ドナルド・トランプは、昨年の大統領選挙戦中から移民に関する様々な発言で注目を集めた。 トランプ政権発足から9ヵ月が経った今日、移民問題をめぐり様々な動きが起こっている。 白人労働者階級の絶望 トランプの発言が注目を集めた背景に、アメリカの人口動態の変化がある。 1960年には人口の85%を占めていた白人(中南米系を除く、以下同様)は2040年代には人口の過半数を下回ると予想されている。他方、人口が増大しているのが移民であり、とりわけ中南米系の人口は2011年の段階で人口の17%とすでに黒人(12%)を抜いている。2050年までには人口の3割に達すると予想されているのである。 2016年選挙でトランプの熱烈な支持者として注目を集めたのが、労働者階級の白人である。グローバル化は世界規模では平等化を推進したが、先進国内では格差