『みんなの「わがまま」入門』は,社会運動をあえて「わがまま」と表現し,中高生を主たる読者として想定するという2点において異色の社会運動入門書である。著者の富永さんから出版記念パーティーにお招きいただいているのだけど,ちゃんと感想を書いていなかったのでまとめておきたい。中高生向けの本の感想ではあるのだが,以下の文章は容赦無しに大人向けの(もっと言えば同業者向けの)論評であることをお断りしておきたい。 「わがまま」という表現は適切だろうか この本が啓蒙書として成功しているかどうかは,社会運動と日常語であるわがままがどの程度接点をもっていて,このアナロジーが説得的であるかどうかに依存するだろう。たとえば「わがままボディ」を「社会運動ボディ」と言い換えたら意味が通らなくなってしまうように,「社会運動」と「わがまま」とは常に入れ替え可能な言葉ではない。両者の共通点がどのくらいあるか,それを説得的に書