「お前は家を建てるのに設計図なしで建てるのか」。ドキュメンタリー製作の"台本至上主義"に異を唱えている映画作家の想田和弘氏は以前、自身のドキュメンタリーに対する姿勢について、このように言われたことがあるそうだ。しかし――。2011年7月29日のニコニコ生放送「想田和弘監督に直撃!ドキュメンタリー映画とそのウラ側にある真実」に出演した想田氏は、「ドキュメンタリーは家じゃない」と語る。 想田氏は、ナレーションも音楽も挿入しない作風で知られるドキュメンタリー映画作家だ。自らは"観察映画"と呼ぶ、台本すらないドキュメンタリーのジャンルを切り開いている。市議会補欠選挙の落下傘候補に焦点を当てた「選挙」(2007)や外来の精神科クリニックを舞台とした「精神」(2008)などは、海外で高く評価されている。 一般的に、ドキュメンタリーの制作現場では、まず対象についてのリサーチをし、何が撮れる・撮れないかを