いつも書いていることだが、日本に欠けているのは、平凡な経済運営である。成長を予想し、それを妨げない範囲で着実に財政再建を進めなければならない。しかし、現実には、財政赤字が大きいというだけで、いくらでも増税や緊縮ができると思い込み、無理な財政運営を行って、成長を落としている。それが国民生活を苦しくし、財政再建さえ遅らせているとは気付かないようである。 2010年度に、日本の財政当局は14兆円の緊縮財政を試みた。その結果、年度後半に成長は失速し、デフレは止まず、円高を招いてしまい、慌てて4.4兆円の補正予算を組む顛末だった。2%弱の成長が当たり前の日本経済で、それを超える規模の所得の吸い上げをしたら、変調を来たすことは、常識でも分かることだろう。 続く2011年度、日本の財政当局は、前年度補正後と比較して、4.9兆円の歳出の緊縮を試みた。3月11日に震災があったが、一次と二次の補正では、実質4
2011/11/910:41 TPPの憂鬱 ―― 誤解と反感と不信を超えて 若田部昌澄 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐる議論がにわかに熱くなってきた。反対論を唱える本がすでに昨年から今年はじめにかけて出版されているように、議論そのものはすでに1年近くつづいている。反対派の代表ともいえる中野剛志氏(京都大学工学部准教授)の『TPP亡国論』(集英社新書)は2011年3月の刊行だ。だが、野田佳彦首相が11月12、13日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けて、交渉参加の決定を下すとしたことで議論のボルテージが上がってきている。 ■自由貿易をめぐる誤解 TPP反対論は、煎じつめれば貿易自由化への誤解、アメリカへの反感、政治への不信の3点くらいになるのではないだろうか。 第一に、貿易自由化をめぐる誤解だ。去る10月27日、中野剛志氏がフジテレビ系の『特ダネ!』に出演したと
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