オウム真理教についての研究書が今年夏、出版された。『情報時代のオウム真理教』(春秋社)。 帯書きにはこうある。「オウム真理教とは、いったい何であったのか。宗教と社会の相剋(対立)を浮き彫りにする」 20代の若手を含む18人の研究者らが、教団の情報発信、説法変遷、海外展開、報道の変遷などを、地下鉄サリン事件(平成7年)以前にまでさかのぼって分析した。 中心になったのが国学院大教授で日本宗教学会会長の井上順孝さん(63)。「反省や将来への教訓が見えてくる。宗教を研究する者として、少しは責任を果たせたような気がする」と語る。 「長い時を要したが、ようやくオウムの研究ができる時代になった」。研究者仲間から、そんな感慨とも安堵(あんど)とも取れる声が寄せられたという。 国政選挙に出馬するなど、教団が社会の注目を浴び始めたのは平成元年。 相前後して宗教研究は、オウムに翻弄されていく。 教団に理解を示し