今回は、トラウマ体験をされた場合、 ほとんどのケースで認められる「解離」という状態に焦点を当てたいと思います。 「解離」という言葉は専門用語でもあり、難解な印象を与えてしまうことが少なくありません。 また、ドラマなどの影響で、いわゆる「多重人格」である「解離性同一性障害」がセットでイメージされてしまうことも少なくなく、 「回復困難なくらい重い」という否定的なメッセージを「解離」という言葉から受け取ってしまう場合もあります。 一方で、 「気がついたら夕方になっていた」 「場にそぐわないテンションになることがある」 「知らない間にアザができていた」等といった状態も「解離」の可能性があるということはあまり知られておらず、 気付かないために適切な対処ができないという面もあります。 「解離」は、人に正常に備わっている機能であり、 「解離」という状態は他の特性と同じように「程度の差」を持つものであるた
エリク・ホーンブルガー・エリクソン(英語: Erik Homburger Erikson, 1902年6月15日 - 1994年5月12日)は、アメリカ合衆国の発達心理学者で、精神分析家[1]。「アイデンティティ」の概念、エリクソンの心理社会的発達理論を提唱し、米国で最も影響力のあった精神分析家の一人とされる[1]。 ドイツ帝国のフランクフルトに生まれる[1]。母のカーラ・アブラハムセン(Karla Abrahamsen)はユダヤ系デンマーク人で、生後3年間はカーラと共にフランクフルトで過ごす。父親は定かではない。デンマーク人の芸術家だったのではないかと言われているが、カーラは最期まで息子にその父の名を明かさなかった。1905年にエリクソンの主治医も務めていた小児科医のテオドール・ホーンブルガーとカーラが結婚し、家族はフランクフルトからカールスルーエに引っ越す。なおミドルネームのホーンブル
自己心理学(じこしんりがく、英: Self psychology)は、ハインツ・コフートにより創始された精神分析学。翻訳本においては主に精神分析的自己心理学と呼ばれる。特にアメリカでは、自我心理学派に匹敵するほどの一大勢力を形成している。日本では精神医学に従事している丸田俊彦・岡野憲一郎・和田秀樹らや、臨床心理学の安村直己・岡秀樹・富樫公一らによって精力的に紹介されている。 自己心理学では健康な自己というものが想定されており、健康な自己は幼少期に母親や父親からの反応によって形成される「野心―才能・技能―理想」によって円滑に動いていると考えられている。それを「三部構成自己」と言う。この三つの部分のいずれかが壊れていると、人間は精神病理に陥るのであり、またこの三つの部分が円滑に上手く働いているのであれば、自己は健康的で創造的な活動を行う事が出来るとされている。 自己心理学ではこの三部構成自己を
心身症とは何か 心身症とはその名前の響きからよく「うつ」や「神経症(ノイローゼ)」と同じような「精神的な病気」というイメージをもたれやすいのですが、本来は体に現れている病気の中で特に心理的な要因が深く関連しているとみられるものを指してこう呼びます。いま現在、多くの方が利用されている「心療内科」で主に対象とするのがこの心身症です。 具体的には、過換気症候群、気管支喘息(ぜんそく)、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、過敏性大腸炎、心筋梗塞、繊維筋痛症、高血圧、腰痛症、癌などなど数多くありますが、どの病気までを心身症とみなすかは現在でもさまざまな意見があり、医師によっては身体上に現れている疾患のすべてを心身症とみなすべきだと考える人もいるようです。 何故かといえば人間の病気を心身一如の態度で観察すると、心理の影響を受けない身体の症状は一つもないことがわかります
1.愛着障害の6つの特徴 (1)愛着障害の対人関係 人は人との関係の中でしか生きていくことができません。どれだけ人との接触を避けようとしても、ゼロにすることは不可能でしょう。対人関係にはコミュニケーションという側面があります。コミュニケーションを通して、言語的な交流と同時に非言語的な交流も行います。そして、その中には思いや気持ち、感情というものが多かれ少なかれ含まれます。 愛着障害の方は対人関係の中で良くも悪くも強い思いを含ませてしまいます。強い好意、理想、愛情、親しみなどを向けると同時に、反対に怒り、不満、憎しみ、嫉妬、恨み、寂しい思いなどといった否定的な感情も感じます。さらには、不安や恐怖、恐れ、苦痛などもあるかもしれません。 そうした強い感情があると冷静な対人関係を営むことができず、極端な距離の取り方をした対人関係になってしまいます。相手に対して過度にしがみついてしまったり、反対に極
解離性障害ではどんな病気なのか、どのような治療、対処が有効か、周囲の人はどのようにサポートすれば良いのか、必要なことをお伺いしました。(掲載日:2024年9月19日) ①「解離」とは、どのような現象でしょうか? 「カイリ」という言葉は最近よく耳にするようになっていますが、それを説明することは決して容易ではありません。解離は私たちが特殊な状況で、心や体の状態がスイッチする現象であり、それにより危機を乗り越えることが出来たりします。そこで生じることは実にさまざまで、意識が遠のく、記憶を失う、手足の感覚がなくなる、など、通常の働きが急に抜け落ちるという形をとる場合が多いのですが、時にはどこかから声が聞こえる、自分の口がひとりでにしゃべりだす、手足が勝手に動き出す、など心身がバラバラにふるまうという形を取ることもあります。解離は意図的に制御することは出来ず、突然始まることが多いため、当人も周囲も戸
ポリヴェーガル理論は、トラウマを扱うセラピストだけでなく、一般の方にも非常に有用な理論です。適度に配慮された環境で育った子どもは、社会交流システムの腹側迷走神経の働きによって、外の世界と豊かな人間関係を築き、喜びを見つけることができます。しかし、虐待やネグレクト、慢性的なトラウマにさらされた子どもは、防御的な姿勢を取るようになり、その結果、通常とは異なる神経系が働き始め、世界を不安や恐怖の目で見るようになります。 トラウマを経験した人の多くは、交感神経と背側迷走神経の影響を強く受け、常に防衛的な態度を取るようになります。これにより、外の世界との交流が非常に難しくなることがあります。特に、幼少期から複雑なトラウマを抱えた子どもたちを観察すると、彼らが無意識のうちに神経系の働きに支配されている様子が明確に見て取れます。このような理解は、トラウマに苦しむ人々へのアプローチにおいて重要な手がかりと
不登校状態とは生命の脳の疲労であるため生活エネルギーがなくなってしまっており、自らを守るためには、じっと動かず回復を待つこと、すなわち引きこもりが必要となる。 …不登校は「心理的な問題」と漠然としてつかみようもない解釈がなされつづけてきたが、実際には中枢神経機能障害、ホルモン分泌機能障害、免疫機能障害の三大障害を伴うものであり、人生最大の危機に発展する例があることがわかってきた。(p3-5) 子どもの不登校、そして小児慢性疲労症候群(CCFS)の専門家である三池輝久先生は、学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている (講談社プラスアルファ新書)でこう書いています。 本来、活力に満ちあふれているはずの学生時代に、想像を絶する慢性疲労とエネルギーの枯渇に閉じ込められ、まったく身動きが取れなくなり、わけもわからないままに不登校、引きこもり、そして「人生最大の危機」へと発展していく。 いった
こうした患者たちは、精神医療を受けている間に、互いに関連のない診断を五つか六つ受けるのが普通だ。 医師が気分変動に焦点を絞れば双極性障害とみなされ…医師が彼らの絶望感にいちばん強い印象を受ければ、大うつ病を患っていると言われて…医師が落ち着きのなさと注意力の欠乏に注目したら、注意欠如・多動性障害(ADHD)に分類され…たまたまトラウマ歴を聴取し、患者が関連情報を自ら提供するようなことがあれば、PTSDという診断を受けるかもしれない。 これらの診断のどれ一つとして、完全に的外れではないが、どれもみな、これらの患者が何者か、何を患っているのかを有意義なかたちで説明する端緒さえつかめていない。(p226-227) トラウマ研究の権威、ベッセル・ヴァン・デア・コーク医師は、まだPTSDという概念が知られていない時代にベトナム戦争の退役軍人の強烈な症状を目の当たりにし、彼らの苦悩の原因を突き止めるべ
「ほとんどの人は」とラヴィーンが指摘するように、「トラウマを〈精神的な〉問題、さらには〈脳の病気〉だと考えている。しかし、トラウマはからだの中にも生じる何かなのである」。 実際に、トラウマが最初に、真っ先にからだに生じることをピーターは示している。トラウマに関連している精神状態は重要ではあるけれども、二次的なものである。からだから始まり、こころが後に続くのだ、と彼は言う。 したがって、知性や情動さえも関与させる「対話による療法」では十分に深いところまで到達しないのである。(p xii) これは、身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア のまえがきに寄せられたカナダのサイコセラピスト ガボール・マテの言葉です。 ガボール・マテはわたしにとって重要な気づきをくれた医師でした。彼のことを知ったのは、慢性疲労症候群(CFS)の専門医である三浦一樹先
ありがたいことに、分離脳研究から多くのことが学べた。 手術で二つの半球を分離すると二つの心をもつひとりの人間になるという最初の定義づけに始まり、長い道のりを経た今日では、決定を行動に移すことのできるようになる複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解に到達した。(p402-403) わたしたちの脳は、ただひとつの自己ではなく、「複数の心」、複数の異なる自己から成り立っている。 そんなことを書くと、まるでドラマやマンガに出てくる現実離れした話だ、と感じるかもしれません。たいていの人にとって、自分はひとつであり、心の中に複数の自分がいる、などと言い出す人は突拍子もなく思えます。 ところが、冒頭の本、右脳と左脳を見つけた男 – 認知神経科学の父、脳と人生を語る –の著者、マイケル・S・ガザニガは、認知神経科学の研究を通して、「複数の心を私たちの誰もが実際にもっていると
「子ども虐待と発達障害が絡み合う要因として、複雑性PTSDと発達障害、特に自閉症スペクトラム症(ASD)とは相性が良いという事実がある」と、外傷性エピソード(トラウマ体験)や逆境的小児期体験(ACEs)などの心の疵、あるいは日常的に体験される傷つき体験などと「発達障害(神経発達症)特性」とは、親和性が高いことがよく知られています。(『テキストブックTSプロトコール』) さらに、発達障害と愛着の障害などの対人関係の障害と、広い意味でのトラウマ体験との関連も指摘されるようになってきました。 養育者との間での愛着(アタッチメント)を基盤にして、「関係性」「認識」「自己制御」が発達します。 このアタッチメントに障害があると、関係性・認識・自己制御の障害だけでなく、別の何らかの精神失調(二次障害)をも引き起こします。 虐待などの小児期逆境体験は、愛着障害やトラウマ反応を引き起こしやすいだけでなく、さ
「心療内科に行ったら終わり。薬漬けにされる」 「何年も通っているのに治らない。薬も増え続けている」 「このまま働かなくていいのか。治療が変わる気配もない」……。 うつなどの気分障害は長期化しやすく、副作用のために何度も薬を変えねばならなかったり、慢性化すると退職せざるを得なかったりします。 通院が長期に渡るのはなぜなのか、根本的な治療のためには何をすればいいのか、最新の心身医学を踏まえて説明します。 最新のメンタル疾患の傾向 9月16日に、2021年までの精神疾患による死者数が更新されました(厚労省調べ)※1。 精神疾患の治療中に亡くなる方は、年々増え続けています。 また、「自殺者」は遺書があった者と定義され、遺書がない(けれど自殺したと思われる)者は、原因不明の死者として計数されるようになりました。 2020年の原因不明の死者数は17万にも上り、その半数が自殺者であるとも言われています。
愛着障害は、両親などの養育者との愛着形成がうまくいかなかったことで現れます。 対人関係や社会性に困難がある大人の中に、その原因が愛着形成に問題があるのではないかと考える人も少なくないようです。 愛着形成に問題があるとはどういうことなのか、子どもだけでなく、大人の「愛着障害」に対処する方法についても解説します。 安定した愛着スタイルを形成できた人は、対人関係においても、仕事においても高い適応力を示します。人とうまくコミュニケーション出来るだけでなく、深い信頼関係を築き、それを長年にわたって維持していくことが可能です。 愛着(アタッチメント)とは? 多くの乳幼児は生後6~7か月になると母親が部屋から出ていくと泣くようになります。 ほかの人がいくらあやしても泣きやまないのにも関わらず、母親が受け取ると直ぐに泣きやむというような行動を示すようになります。 これは乳幼児が母親という特定の人に対して特
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複雑性PTSD(ふくざつせいピーティエスディ、Complex post-traumatic stress disorder、C-PTSD)とは、組織的暴力、家庭内殴打や児童虐待など長期反復的なトラウマ体験の後にしばしば見られる、感情などの調整困難を伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。DESNOS(Disorder of Extreme Stress not otherwise specified)とも呼ばれる。 世界保健機関 (WHO) が発行する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) では、2018年の第11版(ICD-11)において初めてPTSDと区別された診断基準として記載が行われ[1]診断名として2022年1月1日から正式に発効された。[2]。ICD-11における複雑性PTSDの診断基準とは、否定的自己認知、感情の制御困難及び対人関係上の困難といった症状が、脅威感
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