今回は、自他の境界線(バウンダリー)について(1)の記事の続きである。前回の記事で、自他の境界線とは何か、どのようにそれが働くか、そしてそこに何が含まれるか、ということについて述べた。 今回の記事では、引き続きヘンリー・クラウド、ジョン・タウンゼントによる『境界線(バウンダリーズ)』(中村佐知・中村昇訳、地引網出版)にくわええ、上岡陽江・大嶋栄子『その後の不自由』(医学書院)を参考にしながら、そもそもこの自他の境界線がどのように成立するか、それがなぜ混乱するのかについて考察したいと思う。 心の発達と自他の境界線の成立自他の境界線が発達は、人間が「自己」を確立していく過程の中で生じていくものである。まずはその過程を簡単に振り返ってみたい。 共生関係と自己の成立生後しばらくの間、子どもは母親との間に「共生関係」という、まさに一心同体の時期を持つ。全てが満たされた母胎から切り離されるという体験は
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