オタ・パヴェル著『ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく』の訳者・菅寿美さんが、読者のみなさんをチェコ文学、チェコ文化のもっともっと遠く深い場所まで連れて行ってくださいます! 本文… もっと読む
文:小沼理 画:(C)増村十七/KADOKAWA 増村十七(ますむら・じゅうしち)マンガ家・イラストレーター 2012年に「のんちゃん!の破壊☆日記」でデビュー。同年、「ワニを飼う」で講談社第32回MANGA OPEN奨励賞受賞。 15年から17年まで、カナダのマニトバ州ウィニペグに滞在。18年に「バクちゃん」が第21回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門新人賞を受賞し、19年から「月刊コミックビーム」で同作の連載を開始。 移民生活の実体験がベースに ――「バクちゃん」は、増村さんが自主制作としてネット上に発表していた漫画がオリジナルです。この作品を描こうと思ったきっかけは何でしたか? 私自身が2015年から2年弱、カナダのマニトバ州というところに滞在し、永住権を取ろうとしていました。カナダは移民の受け入れには寛容な国で、マニトバ州はその中でも特に受け入れが多い場所だったのですが、それでも毎日
ポルトガル語翻訳者の木下眞穂です。子どものころから日本語の美しい表現、ぐっとくる言い回しを見つけるのが好きでした。初めて強烈に「訳したい」と思ったけれど訳せなかった本と、翻訳をやりたいのだけど……、と頭の中だけでうろうろと悩んでいた時代に出会った本をご紹介します。 『白の闇』 ポルトガル語圏唯一のノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴの『白の闇』とは、私が初めて原語(ポルトガル語)で読みとおした長篇小説であり、初めて「訳したい」と強烈に願いながらも「自分には無理」と自覚し、邦訳が出たときには勝手に安堵すると同時に寂しい気持ちも噛みしめた本である。 翻訳をやってみたい、というのは高校生のころからのぼんやりとした夢だった。そう思って英文学科を受験したが不合格、まあそれもよしと第二希望のポルトガル語を学ぶことにした。ところが、ゼロから始める言語では、いくら大学で学び、留学をしても、長篇小説を読みこむ
「豚のパスタ」 豚の肉とあばら骨の入ったトマトソースをとろ火でじっくり煮込んで、大量のミートボールを作ってから、ジティ(パスタ)とまざあわせる。 パスタとソースがまるで恋人どうしのように寄り添い、全員がとろけるキスの代わりにたっぷりのチーズをまぶして、互いの見わけもつかなくなるまで混ぜる。 ーーアバーテ・カルミネ『海と山のオムレツ』 海外文学を読んでいる時、ごはんシーンはとりわけ好きなもののひとつだ。食べることが好きだし、異国の料理も好き。だからもちろん海外文学の料理シーンも大好きだ。 食べたことがない料理、素材がわからない料理、味を想像できない料理といったセンス・オブ・ワンダー料理もいいし、食べる者みながアーとうめく絶品料理の描写も最高だ。ごはんシーンが出てくると、速度を落としてゆっくりと読むことにしている。 イタリアうまれの作家が書いた『海と山のオムレツ』は、食べることと食事にまつわる
記事:世界思想社 筆者が泊まったテント 書籍情報はこちら 「あんたがいつその話を切り出すかと思って、待ってたんだ。」 深夜の駅の雑踏のなかにしゃがみ込んで、彼女は私に説教した。女性ホームレスのことで修士論文を書いている、だから話を聞かせてほしい、とようやくお願いしたときのことだった。「話があるだろうなと思ったから、ここまで送ってきたんだ。それならそうと、はじめのうちに言うのが筋だろ。あんた、そんな様子では、先生になりたいったってなれないよ。取材ならなぜメモを取らん?」私は自分の煮え切らなさを、ただ詫びるしかなかった。 その女性は六〇代で、二年間野宿生活をしたあと、生活保護を受給してアパートで暮らしていた。私はこの二日前、訪問した女性野宿者のテントではじめて彼女に会った。彼女はかつて暮らした公園で、友人の女性野宿者と繕いものをしながらおしゃべりしていた。しばらくしてカメラを持った学生が顔見知
第86回 遊び・縁・仕事 2021.01.21更新 年始、自分の仕事がどういうものか、すこしだけわかった気がした。 きっかけは、「学びの未来」だった。昨年5月、森田真生さんと瀬戸昌宣さんとのオンライン対談というかたちで始まった「学びの未来 座談会」。以降、月に一度、「座談会」を重ねてきたが、約3時間の「座談会」に加えて、昨秋からは、「週刊 学びの未来」というラジオ形式の対話を週に一度、1時間設けるようになった。森田さん瀬戸さんのお二人が、「学び」について思うことを語り、それぞれの実践を報告しあっている。「人間主導から環境主導の学びへ」「校庭ジャングル化計画」「学びをもっと雑に」「過去に未来を食わせない」など、毎月、大きくテーマに沿いつつも、縦横無尽に語られる話は、子どもたちの教育を考える以上に、自らの大きな学びの場となっている。昨年夏に「こともおとなのサマースクール」を実践し、ちょうど今、
この記事は、藤ふくろうさんが主催している「海外文学・ガイブン アドベントカレンダー」12月9日のエントリです。おじゃましました! 12月1日から25日まで、海外文学好きの方々がエントリを挙げてます。よければぜひ覗いてみてください~。 https://adventar.org/calendars/5669 アメリカの黒人文学といえば、英文学のゼミで読んで「む、難しい」とおののいた記憶ばかりが残る。 たしか題材はフォークナーの短編だった。とにかく英語が難しかった。予習の段階で、単語を調べつつ日本語訳を読みつつでようよう読んだけれど、結局どういう話なんだっけ、と日本語訳をもう一度読み通した。しかも題材も、たとえばサリンジャーやフィッツジェラルドのような華やか(と一概に言ったら怒られそうだけど)な青春小説に比べると、黒人社会の差別や貧困、あるいはキリスト教への信心をテーマにすることが多く、なんだか
ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論 作者:デヴィッド・グレーバー発売日: 2020/07/30メディア: 単行本この『ブルシット・ジョブ』は、文化人類学者であるデヴィッド・グレーバーによる「クソどうでもいい仕事」についての理論である。「クソどうでもいい仕事」とはなにかといえば、文字通りとしかいいようがないのだけれども、「その仕事に従事している人がいなくなっても誰も何も困らないような無意味な仕事」のことである。 原書で刊行された時から日本でも大変に話題になっていた一冊で、楽しみに読み始めたのだけど、これがとにかくおもしろい! 確かに世の中にはブルシット・ジョブとしか言いようがないくだらない仕事が溢れているように見える。それがどれほどありふれているのか、またどのようなタイプのブルシット・ジョブが存在するのか。また、仮にこれが近年さらに増大を続けているとしたら、それはなぜなのか。そ
インタビューと文章: 岡本尚之 写真:池田礼 富山県富山市に生まれ、大学は『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督などを輩出した大阪芸術大学へ。その後、京都でのライター生活を経て上京した、作家の山内マリコさん。『わたしの好きな街』では、かつて住んでいた「吉祥寺」への酸いと甘い思いを込めたエッセイを寄稿していただきました。山内さんの描く小説では、地方や女性、結婚、そして東京というテーマが描かれ、それは彼女が過ごした時間や場所、出来事と密接に結びついています。ということは、山内マリコのルーツや歩いてきた道のりを紐解くことで、小説への想像力はさらに深まるはず。富山県発、東京行きの物語がいま、始まります。 「独り立ち」や「上京」に心を揺さぶられていた少女時代 ―― 昨年、山内さんの故郷である富山市に初めて行ったのですが、想像していた以上に都会で驚きました。 山内マリコ(以下、山内) ありがとう。
大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー) 前の記事:「餅は餅屋」は本当だったし、さらに「米屋の餅」もおいしかった 私が持っている「シマダス」を見てください さてその「SHIMADAS(シマダス)」、正式には「日本の島ガイド『SHIMADAS(シマダス)』」というタイトルなのだが、これから文中に何度もタイトルが出てくることになるので、ここでは「シマダス」という表記に統一させていただきたいと思う。 シマダスは1993年に初めて作られ、その後、改訂版が数冊出ている。私の部屋にあるのがこれ。1998年版だ。 1998年に刊行されたシマダス。1,152ページある。 150ページぐらいの文庫と比べてみる。デカい ズシッと重たいこの1998年版シマダ
ビルギット・ヴァイエ著/山口侑紀訳、花伝社、ISBN:978-4763408334 ドイツの移民の生活を描いたマンガだと聞いて手に取った。 概してドイツのメディアはまじめである。公共放送が中心であるせいか、娯楽色はさほど強くない。それは紙媒体でも同様で、マンガなどもあるにはあるが、ドイツの子どもたちに言わせれば「まったくつまらないもの」なのだそうだ。ほとんどが教育マンガの色彩が強くて説教調。いたずらに子ども扱いしてくるので腹も立つ。だからインターネットの娯楽に向かうんだ、とは彼らの弁。実際、インターネットを通じて日本のマンガやアニメ文化が大流行なのだそうだ。世界中と瞬時につながるグローバリゼーションの恩恵を彼らはそうやって受け取っている。 その一方で、ドイツの移民問題と聞くと、きなくさい話ばかりが伝わってくる。右派政党として知られるAfD(「ドイツのための選択肢」)が勢力を伸ばし、移民排斥
ここ2カ月かけて、洋書の小説を読んでいた。辞書をひきひき、一日数ページずつ、えっちらおっちら、だった。わからない単語だらけだったけど、先が気になるから読んでいけた。 バババババーっと、気持ちの上では貪るように、早く、早く、と、次のページを繰りたかったけど、単語を調べながらなので、そうもいかなくて、じれったかった。 実際に全ての単語をわかる必要はなくて、雰囲気でなんとなく、想像、類推で進んでいける部分が大きい。(ざっくりと〔喜か哀か〕〔良か悪か〕がわかれば良かったり、また、動詞は調べるけど副詞は必ずしも調べなくても行けたりする) おお、うんうん、たぶんこういう感じなんでしょう、と進んだ先でしっくり来なくなってきて、あ、なんかどっかで間違ったみたい、と遡って読み直したりもした。 で、本題はここから。 後悔しているのは、読み終わった直後に、自分の得た印象、解釈をネット上で答え合わせしてしまったこ
2020年05月08日 10時56分 明るい世界を求めてしまう土谷優衣 ジョージ・オーウェル/新庄哲夫訳「一九八四年」 小学生の頃に「アンネの日記」を読んだことをきっかけとして、第二次世界大戦時の全体主義というものに興味を持ち始めた。それに関連する本や・・・ 続きを読む 2019年12月17日 03時11分 科学でも愛をJUNYA エンリケ・バリオス「アミ小さな宇宙人」 「わかったかい? 遊びか、おとぎ話のようにして、ほんとうのことを言うんだ」 真実と呼びたいくらいの誠実さを笑われた経験は数え切れな・・・ 続きを読む 2019年11月13日 16時55分 2035年の世界。さわ 旺季 志ずか「虹の翼のミライ」 人々が“今”の幸せだけを考えて生活し続けた結果。2035年の世界では、海が黒く濁った泥水の塊と化し、それに伴って雨水も毒され、農作物・・・ 続きを読む
ペーターはなんとなく察しをつけた。不滅という言葉は、こういう状態のことを言うのだろう。もう、これから先も、過去のことも、考えるのをやめた。この時間だけが彼をとらえた。 ーーイサク・ディネセン『冬の物語』 世界にかすかな爪痕を残す 「あなたはヨーロッパの冬の絵が好きなのね」と母から言われたことがある。そうかもしれない。ノルウェー・オスロのムンク美術館を訪れた時に買った絵葉書は、「叫び」ではなく、冬の夜のものだった。ピーター・ブリューゲルの絵でいちばん好きなのは「雪中の狩人」だ。 寒さは嫌いだが、緯度が高い地域で見られる、氷河めいた冬の青さは好きだ。ヨーロッパに住んでいた時、あまりに長い冬を呪ったものだが(9月から4月まで真冬でコートが手放せなかった)、あの青く透きとおった空気と空と海には、なんども心を慰められた。ディネセン『冬の物語』を読むと、あの青い冬の空気を思い出す。 冬の物語 作者:
第6回 『うしろめたさの人類学』を読んでみよう(2) 2018.11.04更新 こんにちは、京都オフィスの野崎です。昨日もお伝えしましたが、ミシマ社より2017年10月に刊行された『うしろめたさの人類学』(松村圭一郎著)が第72回毎日出版文化賞特別賞を受賞しました!! 『うしろめたさの人類学』松村圭一郎(ミシマ社) 毎日出版文化賞とは、毎日新聞社が主催する賞で、毎年11月に受賞者が発表されています。文学・芸術部門、人文・社会部門、自然科学部門、企画部門の4部門からなる本賞と特別賞があり、特別賞は「広く読者に支持され、出版文化の向上に貢献した出版物」に対して贈られます。今回この映えある賞に『うしろめたさの人類学』が選ばれました! この賞の受賞を記念して、ミシマガでは昨日と今日の2日間、『うしろめたさの人類学』を特集しています。 本日お届けするのは、『うしろめたさの人類学』が発売された直後の2
ねえ、ミームン!(新刊情報) 『私の話を聞いてください 沖縄に移住した「重度知的障害」の私と先生の交換日記』福知由菜著 福知里恵編 1,320円(内税) 『オキナワミュージックカンブリア ラジオが語る沖縄音楽50年』エフエム沖縄「オキナワミュージックカンブリア」編 1,980円(内税) 『沖縄レトロマッチの世界』ぎすじみち 写真・文 1,980円(内税) 『沖縄文学談叢』仲程昌徳著 2,200円(内税) 『決定版 目からウロコの琉球・沖縄史 厳選!琉球・沖縄歴史コラム』上里隆史 著 1,980円(内税) 『おきなわのマジムンず!』文・朝里樹 絵・ショルダー肩美 1,650円(内税) 『末吉公園で見つけた草木たち スケッチ画で楽しむ沖縄の植物』植物観察とスケッチ画を楽しむ会編 3,080円(内税) 『百次考 屋号「百次(ムンナン)」についての研究』玉那覇善一著 2,420円(内税) もっと
2018年10月7日午後、個人的にかなりショッキングなニュースが飛び込んできた。読書録データベースである「メディアマーカー」(MediaMarker)サービスが来年の 1月に終了してしまうというのだ。Amazon からのデータ提供がされなくなり、サービスが続けられなくなったとのこと。 「メディアマーカー」については、2009年 2月から、約10年にわたって、自分の読書録・蔵書データベースとして活用し、本・Kindle だけでなく、CD、DVD(Blu-ray)も登録してきた。自分のための読書メモ・備忘録であり、また重複して購入することを防止するためのデータベースでもあった。登録件数は、約5,500件。この自分の10年分の記録を、これからどうすればいいのだろう? さて困った…。 いくつか同様の読書録サービスを探し、「メディアマーカー」ほど多機能ではないが、「読書メーター」か「ブクログ」に行き
こんにちは、ブクログ通信です。 岸政彦さんの著作、『はじめての沖縄』(新曜社)が5月5日に発売されました。重版がたびたびかかる人気の本となっています。 岸政彦さん『はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)』 ブクログでレビューを見る この本の発売を記念して、岸政彦さん、温又柔さんによる、『はじめての沖縄』(「よりみちパン!セ」新曜社)刊行記念トークショー 「境界線を抱いて」が5月27日に開催されました。 今回のブクログ通信では、このトークショーの模様をお届けします。岸さん、温さんの本の愛読者のかたがただけでなく、沖縄、台湾、中国に興味を抱いているかたはぜひご覧くださいね。 登壇者プロフィール 岸政彦(きし・まさひこ)さん 1967年生まれ。社会学者。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。博士(文学)。研究テーマは沖縄、生活史、社会調査方法論。著作に、『同化と他者化—戦後沖縄の本土就職者たち
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