約69万冊の蔵書を誇る山形県図書館(山形市)の向かいに古書店「紅花書房」がオープンし、地元の本好きの人気を集めている。「図書館で借りて読んだ本が欲しくなった」「専門書を読んでみたくなった」など、客のニーズはさまざま。ネット販売の普及で経営環境が厳しさを増す中、大樹の陰に寄った「コバンザメ商法」で健闘している。 「紅花書房」は3月、自宅で古書のインターネット販売を手掛けていた庄子敏夫さん(69)が開店。在庫は店内に約2000冊、県内外3カ所の書庫に10万冊近く保管しているという。 店内は約20平方メートル。山形県ゆかりの作家の作品や各市町村史など地域関連書籍を手厚く取りそろえているほか、客から譲られた教育史や民俗学、美術など専門的な本も多く並ぶ。 店を切り盛りする苅谷博さん(37)によると、客の多くは「図書館で借りて読んだ本が気に入り、返却後も手元に置いておきたい」と言って本を探しに来る人た
福島県は双葉町に整備するアーカイブ拠点施設の2020年度開設に向けた資料収集を進めている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の複合災害をどう伝えるか。関係者は展示方法を模索しながら活動に当たる。 収集を受託する福島大の関係者らが2月上旬、同県川内村の公民館を訪れた。調理室内の黒板が目的だ。 <お世話になりました> <絶対帰ってきます> 公民館は原発事故後の4日間、富岡町から避難してきた住民が身を寄せた。黒板に残る感謝や決意の言葉は、避難先が転々とした原子力災害の一端を物語る。 ただ、それだけで当時の状況は分からない。収集チームの柳沼賢治特任准教授は「当事者の話などの情報を加えて初めて、何が地域に起こったかを表現できる」と指摘する。 資料はこれまで、映像を含む約6万点を集めた。昨年11月には第1原発が立地する大熊町の帰還困難区域内にある県立大野病院から、東電のロゴ入り看板や震災翌日の3月
東日本大震災の津波で当時の町長と職員の計40人が犠牲になった岩手県大槌町の旧役場庁舎前には11日、朝から大勢の人々が祈りをささげに訪れた。旧庁舎の解体方針を表明している平野公三町長は午前8時すぎ、町職員約30人と共に黙とうし「解体は悲惨な事実を覆い隠すことでも、つらい記憶を忘れることでもない」と述べた。震災が発生した午後2時46分には、遺族らが犠牲者を悼んだ。読経した僧侶の一人で、拙速な解体に反対する「おおづちの未来と命を考える会」の高橋英悟代表は「庁舎があれば津波の脅威を子どもたちに伝えられる」と語り掛けた。町は開会中の3月定例町議会に解体予算案を提出する予定。可決されれば、命日に旧庁舎前で冥福を祈る機会は今年が最後となる。 屋上付近まで津波の爪痕が残る旧庁舎の前で、犠牲者の冥福を祈る人々に思いを聞いた。 町職員の長女=当時(26)=を亡くした釜石市の小笠原吉子さん(65)は「見ると苦し
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村のうち、半数近い16市町村が震災関連文書について全量保存といった特別な措置を講じていないことが、河北新報社が行ったアンケートで分かった。公文書は通常、保存年限が過ぎると廃棄される規定になっており、後世に残すべき資料の散逸が懸念される。 37市町村の対応は表の通り。特別な措置を取っていない市町村は岩手が宮古市など7、宮城は気仙沼市など6、福島は相馬市など3だった。アンケートでは「通常の規定通り」または「各課の判断で保存期間を延長している」と答えた。 全量保存の8市町村のうち福島県大熊、富岡町は今後整備するアーカイブ施設での公開を検討中。南相馬市は「原発事故の賠償対応が目的」として電子データで全量保存する。宮城県女川町など3市町は歴史的に重要な文書を残す基準を作り、選別作業に入った。 一部に保存措置を取った7市町村のうち、釜石市は201
<閖上津波資料廃棄>委託料返還訴訟 「廃棄が現実的」機構理事長供述 仙台地裁尋問 東日本大震災の災害対応に関し、名取市の第三者検証委員会作成の基礎資料を独断で廃棄したのは不当だとして、住民らが事務局の一般社団法人「減災・復興支援機構」(東京)に業務委託料約4500万円を返還させるよう山田司郎市長に求めた訴訟で、機構の木村拓郎理事長と委託契約担当の市幹部の証人尋問が9日、仙台地裁であった。 機構は2013年7月~14年3月、検証委事務局の運営業務を市から受託。木村氏は「資料は非公開が原則で、公開しない資料を永遠に持っていても仕方ないので廃棄が現実的だと考えた。誰にも相談せず、自分の判断で処分した」と廃棄理由を述べた。 14年4月の検証報告書の公表後、約1年間だけ資料を保存したのは「メディアや研究者から(報告書内容で)問い合わせがあるかもしれないと思った」と説明。市や検証委から資料保存の指示や
山形市の老舗料亭「嘯月(しょうげつ)」が今年3月末で閉店することが25日、分かった。東北の主要都市で料亭が姿を消す中、山形市内では老舗数店が営業を続け、仙台圏からの集客にも努めていたが、経営環境の厳しさが浮き彫りになった。 嘯月は1895(明治28)年創業。1965年に米国のエドウィン・ライシャワー駐日大使が来店するなど、格式ある料亭として知られてきた。 2003年に全面改装して営業を続けてきたが、後継者の不在と業界全体の先細りを背景に閉店を判断したとみられる。併設の小料理店「うけ月」も3月末で店を閉める。 嘯月は25日にホームページを更新し、「長年にわたるご愛顧に心から感謝申し上げます」との文章を掲載した。 山形市内ではバブル経済崩壊後、老舗料亭6店が「六曜会」を組織し、芸舞子の育成など料亭文化の継承に努めてきた。しかし16年6月に同じく明治創業の「のゝ村」が閉店し、加盟店は嘯月を含め5
<東日本大震災>被災地「学費賄えない」58% 子どもの貧困対策を 東日本大震災によって経済的に困窮し、子どもの公的な就学援助制度を利用する世帯の60%が学費を賄えていないことが、被災地で子ども支援に当たるNGOの調査で分かった。調査は昨年に続き2回目。同様の回答は前回より5ポイント程度減ったが、震災から6年以上たっても依然多くの家庭で子どもの教育に影響が残っていることがうかがえる。 調査は国際NGOの公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(東京)が今年2~5月、石巻市と岩手県山田町で実施。NGOが就学費用の一部を独自に助成した小中学校、高校の各1年生の子どもがいる家庭400世帯を対象に実施し、396世帯から回答を得た。 震災前と過去1年の生活を比較して家計が悪化したと答えた家庭は175世帯(44.2%)。就学援助制度を294世帯(74.3%)が利用し、172世帯(58.5%)が学校に
富岡町が保管している被災した時計。針は津波第2波の到達した午後3時35分(上)と震災発生の午後2時46分付近(下)でそれぞれ止まっている 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故などを伝承するため、福島県富岡町が計画するアーカイブ施設の在り方を検討してきた町民会議は30日、基本構想をまとめ、提言書を町に提出した。複合災害の教訓を世界に発信する役割を果たすことなどを求めた。 提言書を受け取った宮本皓一町長は、2020年度中の完成を目指すことを説明。建設場所は町文化交流センター「学びの森」周辺とする方針を明らかにした。完成時期の目標は当初の19年度中からずれ込む。 提言書は役割として(1)地域の歴史と災害の実態を後世に伝える(2)大規模災害時の資料保全手法を全国に伝える-ことなども盛り込んだ。整備する機能には「学習交流」「発信」「展示」「収蔵庫」などを挙げた。 町は今後、有識者による部会に基本計
2020年東京五輪は28日、同年7月24日の開幕まであと1000日となった。大会誘致時に掲げられた「復興五輪」は具体像が見えず、東日本大震災からの復興途上にある東北の被災地は大会への関心が盛り上がらない。政府、組織委員会、東京都は成功の道筋をどう描き、被災地は祭典に何を求めるのか。風化する復興五輪の意味を問う。(震災取材班)=5回続き ◎「復興ホスト」二の足 「協力したい気持ちはあるが、道路やインフラの復旧はまだまだ。とてもおもてなしできる状況にない」 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の佐藤仁町長の思いは複雑だ。 「復興五輪」を掲げる2020年東京五輪に、岩手、宮城、福島3県の被災自治体に参加してもらおうと政府は9月、「復興『ありがとう』ホストタウン」を新設した。 先行して募集を始め、選手の事前キャンプを受け入れるなどする「ホストタウン」には既に全国の252自治体が登録している。参加要
東日本大震災の被災地に、復興の理想と現実が交錯する。発生から6年半、崩壊した風景の再建は進んだが、住まいやなりわいの足元は固まっていない。宮城県知事選(10月5日告示、22日投開票)は、復興完遂に向けた道筋が争点となる。「フッコウ」の掛け声が響く中、沿岸には被災者の苦しい息遣いとやり場のない嘆きが漂う。 ◎2017宮城知事選 <「同じ光景困る」> 「知事選があるから、むしろ旗を立てて県庁に座り込んでもいいんだぞ」 牡鹿半島西部の表浜港に宮城県が計画する防潮堤を巡り、県漁業協同組合の表浜支所(石巻市)で8日にあった意見交換会。海抜6メートル、総延長708メートルの規模に住民の不満が噴出した。 「高すぎて海が見えない。下げてほしい」と再考を求める意見に対し、県の担当者は「科学的実証に基づいた高さは変えない」と拒否。溝は埋まらなかった。 半島東部の県道沿いには防潮堤が徐々に姿を表し、かつて望めた
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