― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ― 昔、タンザニアとケニアの国境でもめました。 三日間、タンザニアを案内してくれたガイドさんと別れる際に、記念に国境で彼の写真を撮った時です。国境といっても、コンクリート作りの平屋の素朴な建物と遮断機のような棒があるだけでした。 車の横に立つガイドさんを撮った瞬間、いきなり、ケニアの国境警備隊に厳しい顔で詰め寄られました。旅慣れた人だと、こういう迂闊なことはしないのですが、僕は素朴な風景とガイドさんとの別れに油断したのです。これが、物々しい軍事基地だと、もちろん、「あ、これは撮ったらやばいかも」と感じるのですが。 国境警備隊は、カメラのフィルム一本をそのまま提出しろと言いました(まだフィルムの時代だったのです)。が、それには、アフリカ旅行の思い出が一杯写っています。それは渡したくはありません。 必死に英語であやまり、「お前の仕