第294号 トランスジェンダーの経産省職員に対するトイレ使用制限の適法性 ~制限を適法とした控訴審判決を覆した最高裁判決の意義~ ~~経産省職員事件(最判令5.7.11)※1~~ 1.はじめに 本件は、第一審判決以来、社会的に非常に注目されてきた事案であるが、東京地裁の第一審判決、東京高裁の原審判決、そして本件最高裁判決のすべてがそれぞれ判断を異にするという異例の展開となったのみならず、第三小法廷の5人の裁判官全員一致の結論であるにもかかわらず、すべての裁判官が補足意見を述べている(ただし林道晴裁判官は渡邉惠理子裁判官と同一意見なので、独立した補足意見としては4本)という点でも、きわめて稀な判決である。また内容的にも、直接にはトランスジェンダーである者の性自認に基づくトイレ使用がどこまで認められるべきかというそれ自体重要な課題を扱ったものであるが、より広く、いわゆるLGBTQなどの性的少数
【ニュース裏表 田中秀臣】 今年の春にオープンした高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」に設置された、性別に関係なく利用できる「ジェンダーレストイレ」が、安全性をめぐる懸念が高まる中で廃止された。 【写真】LGBT当事者らも「マーク多すぎて迷う」 渋谷区内の公衆トイレの案内板 ジェンダーレストイレ、男性用トイレ、女性用トイレ、多目的トイレの密閉された個室が同じ空間の中に並ぶ構造で、洗面台は共有だった。この他に別空間に男性用の小用トイレがあり、警備員がいるなど監視体制にかなりの労力も割いていた。 多様性に配慮する目的で作られたのだが、施設を利用している女性客の不安の声とSNSを中心とした批判が殺到して、早くも改修を迫られた。駅構内に標準的に設置されている男女別トイレと多機能トイレのパターンに比べると、女性専用スペースが事実上消滅した形になっていた。 さまざまな観点からの議論があるだろうが、やはり
六月に施行されたLGBTなど性的少数者への理解増進法を巡り、主に反対派が法案審議で繰り返した「女性と称した男性がトイレや女湯に入る」という主張に、誤った内容だと心を痛めている人がいる。トランスジェンダー男性の斎藤みどりさん(60)=金沢市。慎重にトイレなどを利用してきた過去を振り返り、切実に訴える。「当事者はとにかくトラブルにならない行動を模索している。私たちをもっと信じて、信頼してほしい」 (奥田哲平) ■ 法律巡る議論に心痛 三月末に三十七年間務めた高校教員を定年退職し、今も非常勤講師を務める。新しい学校に赴任するたび、困ったのがトイレ問題だ。広くカミングアウトしていなかった時は、見た目と戸籍上の性別が異なるため、「まずは多目的トイレがあるか、なければ人と会わないトイレを探した」。勤務中はなるべくトイレに行かない体質になったという。
LGBT理解増進法が成立した。超党派「LGBTに関する課題を考える議員連盟」は7月25日に開いた総会において、性同一性障害の経済産業省職員に対するトイレの使用制限を巡る訴訟で、最高裁が使用制限を違法とした判決を出したことを受けて、「公共トイレのあり方も議論すべきだ」といった意見が出たという(LGBT議連「公共トイレも議論を」法成立で総会)。 1.理念法はこれまでの女性スペースの利用をまったく変えない、はずでは? 正直に言えば驚いている。まず、国会では何度も女風呂、女性トイレ等の女性スペースの使用について確認された。それは、共産党の田村智子議員が、「私は衆議院での会議録も読みましたけれども、……女性トイレの問題ばっかりでしたよ。女性スペースの問題ばっかりでしたよ」と本来のLGBT(Q+)についての議論がなされないことを憤るほどだった。 参議院の内閣委員会でも、自民党の有村治子議員に質問に答え
体は男性、心は女性の経済産業省トランスジェンダー職員が女子トイレを使用させてほしいと要求したところ、勤務するフロアから2階以上離れた女子トイレの使用しか認められず、人事院に処遇の改善を求めたものの退けられたため国を訴えていた裁判で、最高裁はトイレの使用制限をした国の対応は違法だとの判決を出した。 この訴訟は個別事案であり、直ちに公共施設全体に適用されるものではないという補足意見は付いたが、既に名古屋市、千葉県、茨城県などでは「今回の判決を踏まえた対応をしていきたい」と担当者が取材に答えている。これは考えてみれば当然であり、同様の訴えを起こされれば最高裁まで戦っても負けることが証明されたわけで、瞬時にコスト計算をするのが行政職員の内在論理だ。さて、この案件について筆者が考える三つの問題点を指摘したい。 (1)裁判官はLGBT活動家から事前研修を受けていた? 最高裁の戸倉三郎長官は今年の憲法記
社会・一般Ministry of Economy, Trade and Industry in Tokyo 標記判決自体については既にメディア各社が数多く報じているが、概略を簡単にまとめると以下の通りである。 いわゆるトランス女性である上告人は健康上の理由から性別適合手術を受けておらず、生物学上は男性である。勤務先の経済産業省はこの点及び上告人が執務する部署の女性職員の意見等を踏まえ、執務階とその上下階のトイレの使用を禁じている。 上告人はこの使用制限を不当として、一般の女性職員と同等の処遇すなわち職場の女性トイレの自由な使用を認める行政措置を要求するも認められなかったため、裁判に訴えるに到った。 7月11日の最高裁判決は原審高裁判決の「トイレの使用に係る要求部分」についての高裁判断は是認できないとし、法令違反を認め、判決の破棄を命じた。 私がこの判決に初めて触れたとき、極めて大きな驚きが
最高裁が一定の留保はつけながらも、奇妙な判決を下した。トランス女性(=生物学的には男だが、心は女性)が職場の経産省において、女性用トイレの使用に制限をつけられていたことを違法だとの判決を下したのである。 国(経産省)側の論理が弱かったのも事実だ。他の女性職員が違和感を抱いているように「見えた」から制限を課したとの主張では、客観的な事実に立脚した論理ではなく、極めて主観的な判断と見做されるはずだ。 一定の留保というのは、裁判官の補足意見の最後に次のように記されていたからである。 「本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている公共施設の在り方について触れるものではない」 世の中のすべてのトイレを、トランス女性に開放せよとの判決ではなかったということだ。 確かに、極めて特殊な状況である。 第1に、国を訴えた職員はトランス女性であることを職場で公開し、説明会が開催され、女性の
勘違いが生まれそう ランキング参加中社会 経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決文 経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射程 原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由はよくわからない 「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=重要な法的利益」なのか? 身体的特徴に基づいた施設利用が求められていたのでは?という点 まとめ:LGBT活動家も反対派も過度に一般化して勝手に騒ぐな 経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決文 最高裁判所第三小法廷判決 令和5年7月11日 令和3(行ヒ)285 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/191/092191_hanrei.pdf 経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決のHP用判決文はこちらです。 経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射
心と体の性別が一致しない「トランスジェンダー」の人が職場のトイレを使用する際、制限を設けるのは違法か-。こんな点が争われている訴訟の上告審判決が11日、最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)で言い渡される。性的少数者の職場での処遇を巡り、最高裁が判断を示すのは初めて。判決内容が注目される。 訴訟の原告は、経済産業省に勤務する戸籍上は男性の50代職員。ホルモン治療を続け、女性として生活しているが、健康上の理由から、戸籍変更に必要な性別適合手術は受けていない。 1、2審判決によると、性同一性障害の診断を受けた原告は平成22年、同僚への説明会などを経て、女性の身なりで勤務を開始。経産省は他の女性職員への配慮として、勤務するフロアから2階以上離れた女性用トイレを利用するよう求めた。 原告はトイレの使用制限の撤廃を人事院に求めたが認められず、国に対し処遇の改善などを求める訴訟を起こした。 1、2審ともに
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