「越境」がツボに入りすぎた勢いでこちらも読了。すばらしい。 この作品の一番のすごさはやはりその圧倒的な「馬描写」にあると思います。これはまわりくどい説明をするより本文を読んでもらった方がわかりやすいでしょう。引用が長すぎるのはあまりよくないかもしれませんが、とりあえず二つほど例を挙げてみます。 ジョン・グレイディが両膝ではさむ肋骨の穹隆(くさかんむりに隆)の内側では、暗い色の肉でできた心臓が誰の意志でか鼓動し血液が脈打って流れ青みを帯びた複雑な内臓が誰の意志でか蠢き頑丈な大腿骨と膝と関節の処で伸びたり縮んだり伸びたり縮んだりする亜麻製の太い綱のような腱が全て誰の意志でか肉に包まれ保護されて、ひづめは朝露の降りた地面に穴をうがち頭は左右に振りたてられピアノの鍵盤のような大きな歯の間からは涎が垂が流れ熱い眼球のなかで世界が燃えていた。彼と馬たちが高い地卓を駆けると大地に蹄の音が響きわたり彼らは