新日鉄住金の上告を棄却して元徴用工への損害賠償を命ずる判決を確定させた韓国大法院(最高裁判所)判決に対し、安倍首相は「国際法上ありえない判断」、河野外相は「両国関係の法的基盤を根本から覆すもの」と非難し、大部分のマスコミや「識者」もこれに追随して韓国非難の大合唱を行っている。これを聞いた多くの人々は、日本と韓国の50余年の固い約束を韓国が一方的に反故(ほご)にしたと思って憤慨している。 しかし、実は日韓請求権協定の締結以来「請求権協定では個人の請求権は消滅しない」と力説してきたのは日本政府であり、2000年前後に被害者を裏切るような解釈の転換を行ったのも日本政府なのである。この事実を明らかにするため、煩雑ではあるができるだけ出典を示しながら問題の経緯を述べてみたい。 「条約では個人の請求権は消滅しない」と力説してきた日本政府 ことのはじまりは1951年のサンフランシスコ平和条約である。この
