人は経済合理性だけで動かない。たとえ料金体系の変更が顧客にとってメリットがある場合でも、「公平性」を欠くと思われれば反発を招く。動画配信で急成長中のネットフリックスも、かつてそれで痛い目を見たことがある。本誌2014年7月号の特集「良い価格 悪い価格」関連記事、第4回。 初期のネットフリックスは、配送によるDVDレンタルのみを運営していた。その後2011年に、同社は動画のストリーミング配信とDVDレンタルのサービスを切り離した。これはビジネスの教科書に忠実な戦略だ。実際にハーバード・ビジネススクールでは、経済的なメリットに基づく意思決定が企業と顧客の両方に恩恵をもたらしうる事例として取り上げられている。 教科書のロジックはこうだ。すべての会員から一律に月10ドルの利用料を徴収していても、DVDレンタルとストリーミング配信の価値は会員によって異なる。おおむね、会員の35%はストリーミングに1