さて、前に加藤陽子さんの本を紹介してから随分間が開いてしまったが、また日中戦争がらみで。といってもこちらは一応満州事変からの動きもフォローされているものの、その焦点はどちらかといえば開戦から戦線が次第に泥沼化していく過程に当てられている。加藤さんの本が新書とはいえ3回頭から読み直さないと頭に入らなかったのに対し、こちらは帰りの電車の中の30分でサクッと読めた。この違いは何を意味するのか? というわけで感想もサクッと。 ・宣戦布告もないままに始められ、そのままずるずると長期化・泥沼化していく日中戦争の本質を、あくまで「殲滅戦」を戦おうとした日本と、初めからこれは「消耗戦」であるという認識を持っていた中国という対比から明らかにしようとする本書の記述はとにかく分かりやすい。特に、汪兆銘政権の位置づけについてここまで分かりやすく説明した啓蒙書は今までなかったのではないだろうか。 ・本書ではさらにそ