サブリミナルに惑わされる脳:下條信輔(カリフォルニア工科大学教授)(1) 2009年6月29日(月)08:00 現代社会は、人間の行動を誘起するさまざまな仕掛けに満ちている。テレビやインターネットをつければ広告が現れ、町を歩けば政治や宗教のスローガンが目に飛び込む。脳科学を利用して購買を促そうとするマーケティング手法まで現れ、欲望を絶え間なく刺激する。いったい、これは私たちが欲した理想の社会なのだろうか。ならば、なぜこれほど息苦しく、ストレスフルなのか。もしかして、その欲望は私たちの本当の意思に基づくものではなかったのではないか——。 カリフォルニア工科大学生物学部教授・下條信輔氏は、近著『サブリミナル・インパクト』でそんな挑戦的な問いを投げかけた。最新の認知神経科学の知見を基に下條氏が明らかにするのは、意識に上らない神経情報処理、すなわち潜在認知と情動の関わりが私たちの意思決定にいかに