「商標法4条1項7号」といえば、商標の専門家の間でも、「どのような場面で適用されるべきか」という評価が未だに定まらない微妙な不登録事由(無効事由)である。 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」 というあまりにシンプル、かつ漠とした要件になっているがゆえに、筋の悪い商標を蹴散らすためのツールとして積極的に使おうとする動きもあれば*1、濫用を戒める動きもあり、特に事件が裁判所に行くと、私人間の権利紛争を発端とする事件に4条1項7号を適用することはなかなか認めてもらえない*2、というのが、これまでの一般的な理解だったように思う*3。 だが、そんな“常識”をひっくり返し、純粋な私人間の関係に起因して生じた商標紛争において、4条1項7号の適用を認めた知財高裁判決が登場した。 以下では、裁判所が4条1項7号該当性を認めるに至った本件特有の「事実」に適宜触れながら、果たしてこのような判断が