夜の海岸線を走る国道で女の子をひろった。 ビニール傘をさして雨の中をとぼとぼと歩く姿が、ヘッドライトの中で片手を大きく上げるので速度を落としたが、女性であることに気づいて、クラクションを鳴らして通り過ぎる。 大の男が女性ヒッチハイカーをひろうわけにはいかないわけだし、旅の途中でもあるわけだし、だいいち予定をずいぶん超過しているわけだし。ちらりとデジタル時計を見ると、九時をだいぶ回っている。周囲にヘッドライトは見えない。しかたなく路肩に車を停め、僕は傘をさして反対方向へ走り出す。 「大丈夫ですか? あいにく男なんです、それに」 駆けより弁解しようとして、言葉が途切れる。ヒッチハイカーの二十歳前後の女性は小柄で、その細い肩を小刻みに震わせていた。 「大丈夫?」 顔色をのぞきこむと彼女のくちびるがかすかに動く。さむい。 歩ける? じゃあ、車まで、距離あるけれど。縦に首を振る。それでとぼとぼとつい