「東京には空がない、ほんとの空が見たい」というのは高村光太郎の妻・智恵子の言葉である。おそらく昭和初期の東京は、工場の排ガスとかで今よりもずっと視界が悪かったのだろう。いまの東京は高層ビルで空が狭いものの、晴れればきれいに青い。 智恵子同様に福島県で育った身としては、平成令和の東京はひたすら狭い場所である。コンビニに入っても棚と棚の距離があきらかに近いし、飲食店でも隣の客に肩がぶつかりそうになる。都会の無機質さを「東京砂漠」と表現したりするが、砂漠だったらもっと広々としてほしい。「コンクリートジャングル」の方はしっくり来る。 ところで比喩でない方の「東京砂漠」は実在する。国土地理院の認める日本唯一の「砂漠」は、実は東京都内に存在する。日本国民の大多数がそこが東京だと認識していない島嶼部である。 伊豆大島はその名のとおり静岡県に近く、また千葉県や神奈川県にも面しているが、行政的には東京都に属