まだ宵の口。 もしあなたが何か読むものを探しているなら、読書猿なんかよりサマセット・モームに尋ねるのがいい。 モームの文学観、読書観を一言で言うとすれば、「読書は楽しくあるのがほんとうだ」ということになる。 この意見について、半分は全くその通りだと言わざるを得ない。 半分というのは、「面白くも何ともないものを読む羽目に陥ってどうしても避けることができない」という体験もまた、読書と呼ぶしかないと思うからだ。 読書に本当も嘘もない。 しかし楽しい読書とそうでない読書があることは認めよう。 そしてモームは、作家としても読書案内人としても、「楽しい読書」を実現させる力を持っていて、それを思う存分に用いて怯まない。 たとえば、心を込めて意を尽くしてモームは紹介し褒めるが、しかし作品や作者の欠点を隠そうとはしない。 「さて、リストにとりあげる最初の書物はデフォーの『モル・フランダーズ』である。英国の小
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