『火曜日のくま子さん』中央公論新社 高橋和枝/著 この本と初めて出会ったとき、それはほんの数か月前なんですけれど、私は心底疲れていたみたいでした。こんな風に回りくどい書き方をするのは、その自覚が全くなく心を鈍化させることでしか、自分自身を守ることができない所にいたからでしょう。 「普通」の生活がある日ぐらっと揺らぎ、瞬く間に暗く重いものへと変貌し、訳も分からぬまま突入した“あたらしい生活”というものが、みなに降りかかってきましたね。 それから幾分時が経ち、今は本当の二極化が進んでしまったと感じています。 世界の捉え方は、そのひとの立つ場所や視点によってこうも違うのかとまざまざと見せつけられたことは、決して望んではいないけれど私がたどり着いた真実でした。 多くの物事の前で、あるいは人々の前で、口をつぐむことが私にとっての誠実さだと判断したがゆえに、口には出せない数々の言葉は体内に蓄積させてい