アジア・パシフィック・イニシアティブ研究主幹 地経学研究所 欧米グループ・グループ長 細谷雄一 PDF版はこちら 「11月11日」は、イギリスなどヨーロッパの多くの諸国では戦没者追悼の日(リメンブランス・デイ)として、赤や白のポピーの花を付ける伝統が続いている。それは、第一次世界大戦が終結した1918年11年11月を忘れないための記念日である。だが、平和を祈念する今年の11月11日には、ヨーロッパと中東という二つの地域で凄惨な戦争が現在進行形で行われていた。ウクライナ戦争と、イスラエル=ハマス戦争である。二度の世界大戦を経て、平和な国際秩序を確立しようとする欧州諸国の試みが大きく揺らいでいる。 この日、ロンドンでは、パレスチナ自治区ガザ地区へのイスラエル軍の攻撃に抗議する、親パレスチナ派の約30万人(警察発表)の大規模なデモが見られた。デモが一部で過激化して、暴力的な衝突が広がると、イギリ