朝日新聞の木村伊量社長が9月11日、「吉田調書」報道に関して、あっさり謝罪したことは何とも不可解だ。「従軍慰安婦検証報道」で過去の誤報を認めながら謝罪から逃げていたうえ、朝日の姿勢を批判したジャーナリスト・池上彰氏のコラム掲載見合わせ問題でも謝らなかったのに、「吉田調書」では急にお詫びの姿勢に転じたからだ。 「吉田調書」は、現政権の原発再稼働への「戦い」 朝日の記者会見の主眼は、「吉田調書」報道に関しての謝罪に置かれていた。むしろ世間の批判、特に木村社長に対する経営責任を問う声は、過去の誤報を潔く謝罪しなかったことやコラム掲載見合わせ問題についての方が多く、「吉田調書」については、政府や東京電力が隠していたことを暴き出した意義があるといった一定の評価もあったのに、である。 朝日新聞がスクープした「吉田調書」は、原子力発電所が想定外の大きな事故や災害に見舞われると、作業に慣れた電力会社の社員