低地ドイツやオランダ語圏では、16世紀半ばまで、魔女といえば、牛乳魔女のことを指していました。 牛乳魔女とは、牛乳魔術を使う魔女で、この魔女にかかると、我が家の牛から取れる牛乳の量はごく少ないものになるか、まったく取れなくなります。 命すら奪える魔術に対して、牛乳魔術とは、あまりに些細な感じがしますが、この地方での町に住みながら農業もやる兼業農家にとって、ミルクやそれから手作りするチーズは、自分の家で消費する他に、町で売って現金収入を得る貴重な手段でした。 彼らは農業と家畜を飼うことに加えて、町で雑貨や何かを売ることなど、一切合切で生活できるぎりぎりの収入を得ていました。 そんな中で牛乳の量が減ることは、その家族にとって致命的にもなりかねない事件でした。 牛が病気であったり、餌を十分与えられなかったり、牛乳の少なさを説明できる通常の理由が見当たらない、しかも事態は何年も、複数の牛について続