長引く不況と国内空調機市場の成熟化という逆風下にもかかわらず、ダイキンは2002年3月期に8期連続の連結経常増益を達成したと見られる。製造業、とりわけ機械メーカーでは数少ない勝ち組企業の1つだ。 成長要因を戦略面から見れば、まず、米空調機大手トレーンとの包括提携に見られる海外展開の強化がある。伸び悩む国内市場に頼らず、成長が期待できるアジアや欧州へと積極的に展開してきた。また、単なる機器の販売にとどまらず、保守・管理などのサービス・メンテナンス事業を収益の柱に育ててきたことも挙げられよう。 さらに、その強さの源泉まで探るならば、井上流の人を活かす経営にたどり着く。 例えば、春闘での労使交渉に「人に基軸を置く」と唱える井上の姿勢が明確に表れている。周囲の企業を見渡せば、ベアゼロ回答、定期昇給の額も見直しと、賃上げを前提とした交渉が完全に終焉を迎えた今年の春闘で、労働組合との徹夜の団体交渉に自