瀬戸内国際芸術祭2016の目玉のひとつである、大竹伸朗の最新作「針工場(はりこうば)」を見るために、香川県の豊島に向かった。訪問日はあいにくの雨。フェリー内のテレビからは、高松商業の56年ぶりの甲子園優勝をかけた熱戦の様子を伝えるニュースが聞こえてくる。 大竹の「針工場」は、家浦港から歩いて10分程の家浦岡地区にある。やや大き目の民家といったサイズの鋸屋根の工場は、かつて、ニットやジャージー生地などを編むためのメリヤス針を生産し、産業の少ない島での貴重な働き口のひとつとして、活気にあふれていたと言う。 鉄の廃材で賑やかにブリコラージュされた門扉に迎えられて、一歩中に足を踏み入れる。家浦岡独特の石垣(豊島では三つの地区ごとに石垣の積み方が異なるという)に挟まれるように据えられた年季の入った門型の鉄枠に、用を終えたと思しき鉄板や古材が括り付けられている。左手奥にある、スレート屋根の小屋で受付を