東日本大震災の教訓を広く発信しようと「岩手県震災津波伝承館」が9月22日、陸前高田市に開館する。被災3県で初の県営伝承施設だが、施設概要からうかがえるのは、被災地の肌感覚とは懸け離れた「お役所の事情」だ。被災地からは現場との連携を求める声が上がっている。 県は本年度、伝承館の開設準備や運営を担う震災津波伝承課を新設。公募で展示解説員を8人採用した。解説員研修は「救援物資の輸送」「災害医療」「県災害対策本部の対応」「被災文化財レスキュー」など多岐にわたる。 「伝承館の立つ陸前高田市では、指定避難場所に逃げた多くの方々が犠牲になった。その事実をどのくらい取り上げるのか」 陸前高田市の語り部ガイド河野正義さん(62)の問い掛けに県の回答は、開館が迫る7月になっても「まだ分からない」だった。 県震災津波伝承課は「限られたスペースで県全体をカバーし、さらに個別に深掘りするのは困難。施設は被災市町村へ