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とある「崖の上のポニョ」に関する記事の中に、こういう記述がありました。「批評」を、算数ドリルの答え合わせのような、どこかに確たる「正解」があって、自分はそれを知っているかのように作品を「採点」することだと思っている人が多すぎやしないでしょうか。みんなが知っているような「正解」とは違う、自分には思いもよらなかったような新しい答え方を、作品の中に発見する営みのことを批評と呼んだ方が、僕はいいと思います。どきどきのような!ふしぎのような!−「崖の上のポニョ」について− - 宮本大人のミヤモメモ これについて、ぼくの思っていることを述べます。 まず、映画の見方について、ぼくの考える映画の見方の「正解」というのは、「どう解釈するか?」ということの中にはありません。「崖の上のポニョ」をどう解釈しようと、それは自由だと思います。その映画の解釈に、一つの絶対的な「正解」があるわけではない。ポニョを可愛いと
(※前回からの続き) なぜ宮崎駿に限って例外的な映画作り(極端な作家的独裁)が許されるのかといえば、もちろん大ヒットするからであって、それ以上でも以下でもありません。しかしなぜヒットするのか、その理由について、俺はこれまで納得のいく説明を読んだことがありません。絵が綺麗だとか、動きが素晴らしいとか、高いテーマ性があるからとか、音楽がいいとか、いくらでも説明はあるのだけれども、それだけが理由だとは、どうも思えないのです。 なぜなら宮崎アニメ以外にも、高いテーマ性をもっていたり、映像や音楽が素晴らしい作品はいくらでもあるからです。もちろん宮崎駿が天才であって、高い芸術性と娯楽性を併せ持った巨匠だということは分かっています。そんなこと、小学生でも知っている。しかし、具体的にどこがよくて、何がヒットの原因なのか説明しろと言われると、とたんによくわからなくなるのです。 宮崎アニメについては昔から言わ
人をdisる時には注意が必要だ誰かをdisる時は、細心の注意が必要だ。生半可にやると、かえって自分がdisられることになる。人の、誰かをdisることに対する眼差しは厳しい。少しでもおろそかなことをすると、とたんにそこを突かれてしまう。人を糾弾したつもりが、かえって自分が糾弾されることになる。これでは本末転倒だ。 だから、そういうdisりブーメランを受けないために、おろそかなことは書かないようにする必要がある。最低限のマナーを守って、節度あるdisり記事を書く必要がある。作法というものを守って、読む人の反感を――disりを買わないようにする必要がある。 そこでここでは、そんな「人をdisる時にやってはいけない作法」を分析し、11の項目にまとめてみた。参考にしたのはこちらの記事。ポニョ見たけど、男の師匠も友達もいない宗介と、オタク的に都合の良い「聖なる女性賛美」が強すぎて駄目でした - さて次
以下のセンテンスまたは類似の言葉を使っている映画評は信用できないorつまらない、というワードを淡々と列挙するよ。 ストーリーが読めてしまうからよくない エンターティメント(娯楽映画)としてはすばらしい 芸術としてはすばらしい 人物描写が浅い(薄い)からよくない 人物描写が深い(しっかりしている)からいい テーマが深いのでいい テーマが浅いのでよくない テーマが見えてこないのでよくない テーマが描けていないのでよくない ある社会との関連が薄いのでよくない ある社会をよくとらえているのですばらしい ある思想なり社会批評なりが描けていないからつまらない ある思想なり社会批評なりが描けているからよい 登場人物に感情移入できないからつまらない と書いている人。基本的に、「自分が読めていないだけなのじゃないだろか」ということに疑いを差し挟まない系の言葉ばかりです。例を挙げると、「人物描写が浅い」という
このあいだ、ひさしぶりに「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」をDVDで見た。つくづく、帝国軍の兵士にはなりたくないとおもった。感想はそれにつきる。帝国軍はほんとうにいやだよ。帝国軍のえらい人であるダース・ベイダーは、なにかへまをした部下がいると、フォースという超能力を使って窒息させ処刑してしまう。「おまえのミスは致命的だ」と通告した次の瞬間、へまをした部下は首を押さえながら「うぐぐ…」という感じで苦しそうに悶えた後、ばたっと倒れる。かわいそうだった。 これでは、帝国軍でがんばることの動機づけ、インセンティブが発生しない。努力するほど損である。下手にがんばって認められ、昇進などしようものなら、責任だけが増え、すべての判断が命がけとなり、ちょっとでも失敗したら即、黒マスクのおっさんによる窒息の刑が待っているという笑えない事態になる。そんなしんどい役職に誰が就きたいだろうか。そのため、誰もができるだ
2008年02月26日16:15 カテゴリ書評/画評/品評Money これはよい経済学ドリル - 書評 - 決戦!業界関ヶ原 洋泉社経由、著者より献本御礼。ただし著者献本と判断したのは、「謹呈 著者」のしおりが根拠。短くても「量産品」でもいいので添え状があるとありがたい。 決戦!業界関ヶ原 松田久一 / JMR生活総合研究所 ただし、内容は添え状不要の面白さだった。 本書「決戦!業界関ヶ原」は、競争の「極相」である「二大対決」を、それが実際に起きている業界から実地に学ぶ、「週刊エコノミスト」に連載していた企画、「業界関ヶ原 二強の布陣」を一冊の本にまとめたもの。ただし、単行本ではなくムックという形態でまとめてある。 目次 - 洋泉社 | 決戦!業界関ヶ原およびAmazonより 決戦00はじめに 決戦01家電量販店ヨドバシカメラvs.ヤマダ電機 決戦02流通イオン・ダイエーvs.セブン&アイ
速水健朗新刊(ソフトバンク新書)。おもしろかったです! 前作「タイアップの歌謡史」はやや趣味性のつよい題材でしたが、今回はより一般的、また誰もが興味を示すであろう旬な話題を取り上げ、タイトルや帯の扇情的な雰囲気もやる気じゅうぶん。本全体が、売れる感に満ちあふれている。来たな、とおもった。中田英寿の引退メッセージを引用したイントロダクションから、「自分探し」というキーワードが様々に展開していく構成にもぐっときました。 とはいえ、わたしはこの本を気軽に読める気がしなかった。「いるよねー、探しちゃってる人」と、のんびり嘲笑できる立場にはないような感じがしたのである。たとえばポジティブ・シンキングについて。速水はポジティブ・シンキングと自己啓発の関係性を指摘しているが、このあたりはちょっとどきっとしました。なぜならわたしは、ふだんから「良いことしか言わない」「ポジティブなこと以外はいっさい口にしな
すばらしい本でした。「A」「職業欄はエスパー」に比肩するクオリティを持った、森達也のあらたな代表作のひとつだと感じた。死刑という、判断がどこまでもむずかしいテーマを扱いながら、「他者を想像する」とはいったいどういうことなのか、何度も立ち止まっては悩む、森の真摯な姿勢に胸がふるえました。読み終えておもう。彼のいうとおり、世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい。だからこそ、他者を想像する営みだけは決して忘れたくない。きっとこの本は、死刑制度について考察されたテキストであると同時に、他者という豊かな、かつ不可解な存在をどうやって想像していくか、その試みのためのテキストでもある。 わたし自身がこの先、司法から死刑を宣告されることはおそらくないとおもう。わたしはたぶん、死刑にならない。わたしが死ぬのは、病気かも知れないし事故かも知れない。父親は脳腫瘍で死んだから、わたしにも同じ病気が起こる可能性はあ
斎藤環新刊(幻冬社新書)。とても理解しやすく、また興味ぶかく読むことができました。著書名もいい。なかなかそそられるタイトルである。ちょっと椎名林檎っぽいしね。これに限らず、斎藤は著書のネーミングセンスがいい。「メディアは存在しない」「若者のすべて」「生き延びるためのラカン」等、書店でタイトルを見ただけで「読んでみたいなー」とおもわせるものが多い。副題は「成熟はいかにして可能か」であり、斎藤のメインフィールドであるひきこもりを題材にしながら、思春期や成熟といったテーマについて論じている。 思春期や成熟というのは、斎藤がくりかえし取り上げているテーマであり、やっぱり斎藤は「思春期」がすきなんだろうな、と想像してしまう。わたしも思春期がすきである。なぜなら陰鬱でしんどくて救いがないから。いやだったなあ、思春期。治りかけのかさぶたをつい剥がしてしまうように、思春期はいつもじくじくしていた。そんな時
はてなグループの終了日を2020年1月31日(金)に決定しました 以下のエントリの通り、今年末を目処にはてなグループを終了予定である旨をお知らせしておりました。 2019年末を目処に、はてなグループの提供を終了する予定です - はてなグループ日記 このたび、正式に終了日を決定いたしましたので、以下の通りご確認ください。 終了日: 2020年1月31日(金) エクスポート希望申請期限:2020年1月31日(金) 終了日以降は、はてなグループの閲覧および投稿は行えません。日記のエクスポートが必要な方は以下の記事にしたがって手続きをしてください。 はてなグループに投稿された日記データのエクスポートについて - はてなグループ日記 ご利用のみなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。 2020-06-25 追記 はてなグループ日記のエクスポートデータは2020年2月28
昨日は橋本治氏の講演。時間をかなりオーバーして終了。文章そのままな感じの話しぶり。面白く聞いた。 今回のメインは橋本氏の古典関連仕事についてだったのだけど、橋本氏は「なぜ古典がわからないのかというと、そこに「わからないこと」が書いてあるからなんだ」という話をされていた。 「わからない」とは、「そこにある言葉について、知識も何もなくちんぷんかんぷんな状態」と言えばいいか。「頭の中に何も思い浮かべられない状態」と言えばいいか。 橋本氏は編み物の本を出すに至った経緯について「編み物が身近でもなんでもない男性が、さて編み物をやろうと言うとき、どこに行けば材料が用意できるのかと言うこともわからないわけだから、そこから書いた」という話をされていた。その物事に既に慣れていて、親和性のある人にとっては「別にどうってこともないこと」になっていることだと、「わからない」と他の人に言われたときに、「何故わからな
今年「も」沢山のスゴ本と会えたのは、すべてあなたのおかげ。 ありがとうございます、大感謝しています。 たとえば、「この本よかった」とblogに書く すると、「ソレが良いなら、じゃぁ○○なんて、どう?」と教えてくれる じゃぁ、○○を読む なんと、す、スゲぇッ(絶叫) いそいで、「○○はスゴ本」とblogに書く ふたたび、「ソレが良いなら△△どうよ?」 このフィードバックループのおかげで、普段は読まないエリアまで手が伸びる伸びる。 もちろん嗜好の違いによる「ズレ」はあれど、それは単に「面白がって読めなかった」にすぎない。むしろ、そいつを味わうためのキャパ不足を痛感しただけでもめっけもの。その本を面白がって読むことはスキルの一つ。 気の毒なことに、「トシとると面白い本がなくなる」とグチるオッサンがいる。知見の狭さや思考の固さよりも、無自覚な様子が傍目に痛い。ああはなりたくないものだ。「ボクの範囲
徹底討論!〜メッタ斬り!版芥川賞レース予想(後編) (前編はこちら) (アライ ユキコ=フリー編集者) 大森 今回、西村賢太が候補に挙がったおかげで、松尾スズキはちょっと分が悪いよね。 豊崎 そう、同時に候補になっちゃったことが最大の敗因になるかもしれない。西村さんが一種天然の笑いだとすると… 大森 松尾スズキのは、計算し尽くした、つくった笑いだからね。さすがに巧いんだけど、「松尾スズキならこれくらいは書けて当然」と思われてしまうところも弱い。 豊崎 この人は、人生の箍(たが)が外れかけている人間が醸す無惨な笑いってものを書かせたら東西随一の作家です。演劇でもそうであるように。 「クワイエットルームにようこそ」は、いわゆるオーバードーズで強制入院させられた女性ライターの、退院するまでの数日間を描いた物語。今現在「もう限界、絶望!」っていう悲しみの極みにある人にはぜひ読んでいた
初めて梅干しを作ってみた話 今年の夏、初めて梅干しを作りました。 私梅干し大好きなんですが、自分で作るという発想がなくて…同僚が梅シロップを作っているのに影響されて去年から梅仕事を始めてみたんですが、そのときの説明書に「梅干しの作り方」というのも入っていて、えーー梅干しって自分…
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あまりブログを書く気がしない。なら書かなくてもいいのだろうが、思うことがないわけでもない。またあまりストレートなことを書くのもなんだしと逡巡して時は過ぎる。そんなことを思いながら雑多に読んだ本の山を見ていると、「人生は負けたほうが勝っている 格差社会をスマートに生きる処世術 (山﨑武也)」(参照)を見つけた。 今年の年頭に出たもので書店で表題を見て惹かれて読んだ。私も、人生っていうのは負けたがほうが勝ちだよな、と思っているくちなので、同意見だなとそれだけの理由で読んだものの、いろいろ啓発されることがあった。ただ、こういうのは若い人にはわからないことが多いだろうしとこれもまた時が過ぎ去った。が、さらりと再読してやはりこれは良書というか、30代くらいのビジネスマンなら今読んでおくとおかないとで20年後に違いがでるかもしれない大人の知恵が詰まっているなと思った。ので、ちょっとエントリに書いてみる
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