佐々木豊氏という画家がいる。国画会の重鎮らしいが、私の知っているのはインタービューの名人としての佐々木豊だ。今はたぶん画壇の実力派のボス的存在で、怖いものはないのだろう、絹谷幸二のマンネリ化や千住博の画壇遊泳術にそれとなく触れ、山本容子や松井冬子の美人画家にも手をゆるめない。貴重な目利きといえるだろう。 佐々木豊は若い頃からインタービュアや作家訪問記のアルバイトをしている。そのときからの習慣で、取材対象の作家の資料は、今でも手に入る限り目を通しているそうだ。その努力の成果がよく現れているのが会田誠のインタービューだ。誰もが聞きたい下世話な話に見せながら会田誠の芸術の核心に迫っている。 しかし、驚いたのは、「《犬》シリーズは首輪を取ったら普通のヌードだ」という発言だ。手に入る資料を全部読んだのなら、会田誠が《犬》シリーズはライフワークだと言っていることも知っているはずだ。会田誠はいつもの得意