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ブックマーク / call-of-history.com (8)

  • 「キリシタン大名 (読みなおす日本史)」岡田 章雄 著

    講談社学術文庫やちくま学芸文庫などを始めとして学術書の再刊レーベルは多い。吉川弘文館の「読みなおす日史」シリーズも評価が定まっていながら入手が困難になった歴史書の名著の再刊を行っている。書は1977年に刊行された、当時としては新しい翻訳史料にもとづいて「キリシタン大名」の全体像を描いた名著で、2015年に「読みなおす日史」シリーズの一冊として再刊された。 著者の岡田章雄(1908~82)氏は戦後の中近世日欧交渉史、キリスト教宣教史研究をリードした研究者で、以前紹介したルイス・フロイス著「ヨーロッパ文化と日文化 (岩波文庫)」の翻訳者でもある。同書は丁寧な翻訳と詳細な注釈が実に素晴らしい仕事だった。 キリスト教の平等と戦国大名の統治さて、書は著者の元に送られた中学二年生の女の子からの手紙への回答から始まる。 「私は『キリシタン大名の領地内のキリスト教信者(農民)の統制はどのように行

    「キリシタン大名 (読みなおす日本史)」岡田 章雄 著
    youchan40
    youchan40 2016/02/01
  • 「ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間」山田寛 著

    破壊と殺戮の二〇世紀の百年の中でも殊更異彩を放つのが1975~79年のカンボジアを支配したポル・ポト体制であった。人口八〇〇万人の国家で、約一五〇万人から二〇〇万人が殺され、全ての国民が農地へと送られ、貨幣と市場が否定され、宗教、文学、音楽、ありとあらゆる文化が弾圧され、行政機構が解体され、多くの建造物や社会インフラが破壊された。未だ謎の多いポル・ポトによる革命を整理した一冊。 ポル・ポトとクメール・ルージュ統治下のことについてはわからないことが多い。証拠となる資料があまり残っていないこと、クメール・ルージュ時代の真相解明が政争の道具となりがちなこと、事件を総括する裁判がその後の政治状況もあってなかなか開かれず、開始されたのが2007年とかなり間が空いたこと、当事者の多くが老齢で認知症となった者もいて証言を得にくくなっていること、そしてポル・ポト一人にその責をかぶせて真実に蓋をしてしまう傾

    「ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間」山田寛 著
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    youchan40 2015/09/30
  • 「山怪 山人が語る不思議な話」田中 康弘 著

    マタギ・狩猟に関する著書が多い著者がマタギ、猟師、山で暮らす人々や山岳関係者から収集した山にまつわるちょっと不思議な話集。 著者が「こので探し求めたのは、決して怖い話や怪談の類いではない。言い伝えや昔話、そして民話でもない。はっきりとはしないが、何か妙である、または不思議であるという出来事だ」(P248)と言う通り、物語性の強い怖い話は少なく、語り手の体験の主観がよりくっきりと現れた他愛無い雑談という雰囲気が強い。 語られる不思議な話の多くに共通するのが何につけ狐や狸に化かされたという結論に至る話が多いことで、最近になっても狐に化かされるという話が説得力を持っているようだ。面白いのは、狐に化かされたというオチになる話の多くが、例えば、間違えるはずのない慣れた山道で迷ったとか、待てど暮らせどなかなか来ない待ち人が実は狐に化かされて遅れたとか、姿が見えなくなったのでみんなで探しだしてみたら意

    「山怪 山人が語る不思議な話」田中 康弘 著
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    youchan40 2015/09/28
  • 「居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化」飯野 亮一 著

    幕末に日を訪れた外国人が驚いたことの一つに、日人がひどく酒癖が悪いというものがある。例えばヘボン式ローマ字で知られるヘボン(日在住1859~92)は昼間っから酒を飲んで酔いつぶれ、あるいは大暴れしている人びとの多さに驚き、また酔って仕事もままならなくなる日人家事使用人たちに悩まされている。せめて仕事中ぐらいは酒を飲まない労働者を雇えないかと日人商人に尋ねるが、そんな日人を見つけるのは難しいと言われて途方に暮れていた。他の外国人もすっかり出来上がった武士の姿に恐怖を感じている。昼間っから刀持った酔っぱらいが歩いているんだからそりゃ怖い。ヘボンに遡ること三百年、ルイス・フロイスも戦国時代の日人の酒癖の悪さを書き留めていて、もちろん欧米でも酔っぱらいは多かったものの、西洋人からは日人の酔い方は度を越して酷いと見られていた。 武士も町人も昼間っから酒を飲んで仕事もそこそこに、そこら

    「居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化」飯野 亮一 著
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    youchan40 2015/06/11
  • 「幕末の朝廷―若き孝明帝と鷹司関白」家近 良樹 著

    まぁ絶版なので最初は書評書かなくてもいいかと思ったのだが、やはり書の幕末史における重要度から言っても紹介しておく方が良いかなと。2007年のなので、たぶんあと五年か十年かしたら中公文庫なり講談社学術文庫なりから再販されるんじゃないかと思うが、とりあえず良いなので、古書なり図書館なりで一読おすすめします。一応、先日紹介した同じ著者の「江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」 (講談社学術文庫)」2~5章で同時代の大まかなアウトラインはつかめます。 天皇の地位の急激な上昇日近世・近代政治史上最大のテーマ、それは「天皇は何故これほど急激に地位を向上させたのか」ということだ。 豊臣氏を滅ぼした徳川幕府は元和元年(1615)、禁中並公家諸法度を制定して天皇と朝廷を事実上支配下に置いた。表面上幕府と朝廷は対等という体裁を整えてはいたが摂関家以下公家は将軍に臣従し、武家伝奏を通じて朝廷統制が行われ天皇

    「幕末の朝廷―若き孝明帝と鷹司関白」家近 良樹 著
    youchan40
    youchan40 2015/04/14
  • 「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著

    ペリー来航から大政奉還・王政復古・鳥羽伏見に至る江戸幕府解体の過程は長く西南雄藩を中心にしての見方が支配的だったが、1980~90年代以降、幕府朝廷・朝敵諸藩に関する研究が進み、勝者側である薩長中心の王政復古史観に批判が加えられ、より大局的に幕末を考える視点へと研究の主軸が移ってきた。 その中で非常に重視されるようになった幕末の勢力に一橋慶喜・会津松平容保・桑名松平定敬による「一会桑」がある。近年では大河ドラマでも当たり前のように使われているし、概ね一般的になってきているのではないだろうか。近年の主流となりつつある「一会桑」を提唱したのが書の著者家近良樹教授で、その「一会桑」とやはり再評価されてきた孝明天皇の朝廷の動きを中心に据えて幕末政治史を捉え直したのが書である。2002年に新書として発売されたものに改訂が加えられて2014年に講談社学術文庫から再発売された。 武力倒幕を目指す西南

    「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著
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    youchan40 2015/04/11
  • 「贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ」桜井 英治 著

    社会に贈与の慣行が深く根付き、一気に浸透したのが中世であるという。その日の贈与はどのようなものだったのか。市場経済の拡大と結びついた贈与経済の姿を、史料を丁寧に読み込むことで明らかにしていく一冊。 マルセル・モースと彼の「贈与論」を研究したモーリス・ゴドリエによると「贈与」をめぐっては次の四つの義務が発生するという。 1) 贈り物を与える義務(提供の義務) 2) それを受ける義務(受容の義務) 3) お返しの義務(返礼の義務) 4) 神々や神々を代表する人間へ贈与する義務(神にたいする贈与の義務) 贈与慣行は古代から現代に到るまであらゆる社会に見られるが、大なり小なり上記の四つの義務が存在している。贈り物を受けたらそのお返しをせねばならないという意識が芽生えるし、贈り物を贈られた際に受け取らないようにするのは若干の後ろめたさを覚えるものでもある。例えば上司や同僚、取引先など仕事上の関

    「贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ」桜井 英治 著
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    youchan40 2015/03/23
  • 「古代天皇家の婚姻戦略」荒木 敏夫 著

    古代天皇家の婚姻の特徴はその強い閉鎖性である、ということを様々な史料を元に当時の東アジア諸国の婚姻関係との比較も交えつつ大局的に描いた一冊。一言で言うと「お兄ちゃんだけど政治目的さえあれば関係ないよねっ」って話(たぶん)。 倭・日の古代王権は濃密な近親婚によって強い結束力を保とうとした。皇族男性は外部からキサキを迎えることはあっても、皇族女性が非皇族と結婚することはほぼ無く、皇族女性は皇族男性と婚姻関係を結ぶという婚姻規制が存在していた。その特徴は、一つに異母兄弟姉妹婚による同世代婚、もう一つがオジ―メイ婚・オバ―オイ婚による異世代婚である。 六~八世紀を通じて、歴代天皇のキサキを整理するとその多くが異母姉妹か、畿内の諸豪族、一部のほぼ限定された畿内の外(「外国(ゲコク)」)の諸勢力から女性がキサキとなっていることが書で明らかにされている。 例えば天智天皇の子女四人の皇子と十人の皇女の

    「古代天皇家の婚姻戦略」荒木 敏夫 著
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    youchan40 2015/03/16
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