結婚とは本来は限られた人が行うことであり、仮に結婚できたとしても、家庭の実質的な権力者は妻となることが多いのではないか─―。 私がこうした思いを抱く直接の契機となったのは、京都大学総長である山極寿一氏による『父という余分なもの─サルに探る文明の起源』(新潮社)を読んだことである。さらに関連するデータについて触れ、さまざまな女性や男性の話を聞くにつれて、その思いはますます強くなっていった。 性、結婚、家族という話題を日本の歴史上から評価すると、明治・大正・昭和時代のそれらはやや異色の時代であったと理解できる。すなわち皆婚社会、離婚しない、安定した家族、といった特色は最近のおよそ100年間くらい続いたものにすぎない。 人間社会が否定し手に入れたもの 拙著『男性という孤独な存在』でも触れているように、日本の夫婦を規定するのは、かなり厳格な一夫一妻(婦)制である。換言すれば、夫ないし妻は他の女、な