岩手県奥州市水沢区にある、駒形神社は「陸中一宮」を名乗っている。「一宮」というのは、伝統的に律令国ごとに一つしかなく、国司が参拝する位の高い神社であったとされている。もっともこの「一宮」という称号のようなものは、朝廷の公式な定義がなく、いつの間にか民間で呼ばれるようになったものらしいのだが、なんとなく12世紀頃から各地で言われるようになったものだ。 で、まあ古代律令国のトップの神社であるならば、それは由来がいまいち定かではなくても伝統ある立派な物だと思うだろう。ところで、律令国に「陸中国」なんてあったけ? 関東以北の本州地域は、古代から近代まで大きく陸奥と出羽の国に分かれていた。政権中枢から離れていて、遅れて朝廷支配下に入った、やたらだだっ広い田舎だったのである。明治維新時、奥羽越列藩同盟を作って官軍に対抗したこともあり、戦後陸奥と出羽は分割された。陸奥国(むつ)は陸奥国(りくおう)、陸中
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