科学の活動をめぐるさまざまなダイナミズム――生成や変容、あるいは固定――を社会科学の視点から明らかにするSTS(科学技術社会論)という研究領域がある。本連載では、新型コロナウィルス感染症の対策にも使われ議論を呼んだ「感染症数理モデル」をとりあげ、STSというレンズが何を映し出すのかを紹介する。 STSという研究領域 AI(人工知能)や、自動運転技術、あるいは、ゲノム編集食品、人工食肉、自然エネルギーなど、私たちの社会には日々新しいテクノロジーが生まれていく。これらの新しいテクノロジーは、私たちの普段の生活や働き方に変化をもたらすだけではなく、自然や生命に対するそもそものイメージや、価値観を揺さぶるものである。他方、人口減少問題や地域活性化など一見「社会」のみにかかわるような課題であっても、実はその動きに科学・テクノロジーにかかわる要素が含まれていることもある。たとえば、急激な人口減少と並行
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