アルコール依存症患者の飲酒は、生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療である。 彼らの多くは、幼少時から深い傷を負っていたり、人に対して安心感をもてなかったり、過度の緊張を強いられたりしている。そして、苦しい時にも人を信頼できず、誰にも相談したり助けを求めたりできない、対処できない困難に直面する時、飲酒によって気分を変えて凌いできた。 この「孤独な自己治療」という考えかたを初めて知ったのは『人はなぜ依存症になるのか』という本だった。この考えかたがとても好きで、今後の治療における座右の銘に据える。 さて、引用を続ける。 アルコール依存症の治療では、患者も家族も治療者も断酒に囚われやすい。治療者や家族は必ず「絶対飲酒しないように!」と釘を刺す。患者は「飲みたい」、でも「飲んではいけない」と葛藤している。断酒を強要されると飲酒欲求は高まる。断酒を強要することは害でありやってはいけない。再飲酒を責める