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今日の欧州のシステミックリスクについてはどのように考えるべきなのだろうか。欧州連合(EU)は、危機管理でまずまずの成功を収めている。しかし、今のように複数の危機が交差している時には、難局を何とか切り抜ける能力さえも限界に達しつつある。 この問題が最もはっきり分かるのはギリシャだ。この国は、経済のメルトダウンと難民危機の両方に取り組んでいるが、ほかのEU諸国からは大した支援を受けていない。 欧州委員会が先週、国境を管理できていないとギリシャ政府を批判する報告書を出した時には、マケドニアがギリシャとの国境検問所を封鎖する決断を一方的に下し、数千人の難民が国境のギリシャ側で立ち往生することになった。 一方、アテネでは議会が年金改革を議論していた。金融面の生命維持を続ける対価として債権者たちから強いられた措置だ。 ギリシャは、最も厳しい事例ではあるかもしれないが、複数の危機に同時に見舞われている唯
イタリアがギリシャのようなショックに見舞われたら・・・ ギリシャがマケドニアの決断の後に経験しているショックのようなもの、つまりシリアから流入する移民の急増のようなショックにさらされたら、イタリアはどう対処するのだろうか。筆者は考えるだけでぞっとする。そのような事態が起こり得るのは、例えばドイツに向かうシリア難民が好んで使うバルカン・ルートのどこかでさらに国境が閉鎖された時などだろう。この場合、難民たちはアドリア海経由でイタリアに向かう公算がある。 EUに、そして特にドイツに対するイタリアの我慢が、限界に近づきつつある兆しは既にある。 マッテオ・レンツィ首相がエネルギーやロシア、財政赤字、さらにはEUの組織全体におけるドイツの支配力などについてのEUの政策や方針を公然と批判しているのだ。 イタリアがユーロ圏内における地位に疑問を抱く寸前まで行った原因はユーロ危機だけではない。原因は多くの危
2016年に関する予想を評価する際には、「連続性バイアス」に気を付けた方がいい。今年は昨年に少し似た年になる、ただ、その様相が強まるだけだと想定したくなる衝動のことだ。 実際、最近の政治史は、1年を決定付ける出来事は概して大きなサプライズや連続性が突然途切れる断絶であることを示している(どうしても必要なら、それを「ブラックスワン」ないし「未知の未知」と呼ぶといい)。 2014年の初めに、筆者の知る識者でロシアがクリミアを併合するとか、ISISと呼ばれるジハード(聖戦)主義者集団がイラク第2の都市モスルを制圧すると予想している人は誰もいなかった。 また、2015年の初めに、多くの人がこの年に100万人以上の難民がドイツに到着すると予想したり、米国でのドナルド・トランプ氏の信じ難い台頭を予見したりしていたという記憶はない。 これらはすべて、2016年の最も重要な地政学的な出来事もやはり、識者と
新年が手招きする中、本紙(フィナンシャル・タイムズ)は今再び、向こう12カ月間の出来事を予測する恒例の儀式にふける。本紙の専門家と解説者が普段の慎重さを封印し、米国の大統領選挙からサッカーの欧州選手権(ユーロ2016)に至るまで何が起こるかを予想する。 その前に、 1年前の予測 の結果をざっと見てみよう。 エド・クルックスは原油価格の続落を正確に予測した。原油価格がすでに半値になった年の終わりだけに、これは勇気ある予想だった。 マーティン・ウルフは欧州中央銀行(ECB)が全面的な量的緩和(QE)を導入すると予測し、その通りになった。 クライブ・クックソンは、2015年末までに西アフリカのエボラ出血熱が根絶されるとの予想を的中させた。ギデオン・ラックマンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナや欧州で別の地域を併合することはないと述べていた。2014年末の時点でそう公言していた向
仏パリのレピュブリック広場で、同市内で発生した連続襲撃事件の犠牲者を追悼するために置かれた花やメッセージ〔AFPBB News〕 国際政治では「文明の衝突」が最も目立つようになるだろうと故サミュエル・ハンチントンは予言した。1993年に最初に打ち出されたこの理論は熱烈な支持者を獲得してきたが、その中には好戦的なイスラム主義者も含まれている。パリで大量殺人の挙に出たテロリストらは、イスラムと西側諸国は避けられない死闘を繰り広げていると考える勢力の一派だ。 これとは対照的に、西側諸国の政治指導者たちはほぼ決まって、ハンチントンの分析を退けてきた。 米国のジョージ・W・ブッシュ前大統領でさえ、「文明の衝突など存在しない」と言い切った。 西側諸国の多文化社会――その大半で、イスラム教徒は大規模なマイノリティー(少数派)集団を形成している――における生活は、異なる信仰と文化は共存も協力もできないとい
メルケル氏の率いる保守政党・キリスト教民主同盟(CDU)の党員たちが、難民に「門戸を開く」同氏の政策をこれ以上ない厳しい言葉で非難したのだ。 「どんな人が来るのか分からない」。集まった忠実な支持者1000人の前である代議員が発言した。「何人来るのかも分からない。すでに何人来ているのかも分からない」 メルケル氏のリーダーシップを批判する参加者もいた。ある代議員は次のように言い切った。「『あんな首相はもう支持できない』と私に言ってくる市民がますます増えている」 一方、メルケル氏が「これは私が首相として直面する最も大きな課題である。状況が厳しいことは承知しているが、私はあきらめない」と語り、「難民歓迎」の方針を貫くと誓うのを耳にして喝采を送る人もいた。 しかし、シュクロイディッツで見た風景のうち脳裏にこびりついて離れなかったのは、次のような文句が書かれたプラカードだった。「難民による混乱を止めよ
大方のドイツ国民はメルケル首相の決断を歓迎したが、難民の大量流入の現実に困惑している(写真はベルリンで難民申請の順番を待つ亡命希望者)〔AFPBB News〕 欧州は同時進行する5つの危機と奮闘している。いずれも、異なる発展段階にある不測のショックだ。シリアからの難民、ユーロ圏周縁国の債務、世界的な景気減速、ロシアのクリミア併合とその余波、そしてフォルクスワーゲン(VW)の犯罪と不正行為である。 カオス理論の人気の比喩は、世界の別の地域で竜巻を引き起こす蝶の羽ばたきだ。 欧州の罪のない危機の引き金は、シリアからの難民にドイツを開放することにしたアンゲラ・メルケル首相の道義的な決断だった。 大半のドイツ国民は熱狂的にこの決断を歓迎したが、首相は来るべき事態に向けて、政治的、物理的に自国と他の欧州諸国を備えなかった。 難民受け入れを決めたドイツの英断の代償 ベルリンとハンブルクでは、住宅事情が
欧州連合(EU)は前進するために危機を必要としている――ブリュッセルにはそんな、聞くとほっとするような決まり文句がある。しかし、今日の欧州が直面しているさまざまな問題の盛り合わせ――難民、ユーロ、そして英国のEU離脱の危険――は、EUを強化するどころか押しつぶしてしまう可能性の方がはるかに高いように見える。 EUの基本的な功績と教義のいくつかが、ここ数十年間で初めて脅威にさらされている。 具体的には、単一通貨ユーロ、域内の国境開放、域内の労働力の自由移動、そしていったん加盟したら永久に加盟国であり続けるという認識がそれにあたる。 EUはこうした困難に立ち向かうどころか、その圧力を受けてきしんでいる。加盟28カ国は激しく言い争っており、共通の問題への効果的な対策を練ることなどできそうにない。 言い争いの背景にある不穏な状況 加えて、こうした言い争いはある不穏な状況を背景に起きている。第1に、
トルコ・アクチャカレの国境検問所の近くで、壊された国境のフェンスからトルコ領内に不法入国するシリア難民ら〔AFPBB News〕 歴史家がバラク・オバマ大統領の実績を評価する時、シリアという言葉はマイナス要素になるはずだ。オバマ氏がバシャル・アル・アサド大統領の政権退陣を求めてから4年経つ。オバマ氏はその実現に向けてほとんど何もしなかった。そして、やろうとしたわずかなことは、アサド氏の支配力を強めたと言える。 20万人以上が命を落とし、400万人が難民と化した後、米国の対応を他の西側民主主義国の対応と区別するのは難しい。 ドイツとスウェーデンを顕著な例外として、西側諸国はシリアから逃げ出す群衆への支援を拒んだ。 オバマ氏は用心すべきだ。シリアは、立派な外交的レガシーの脚注などではない。これは過ちの告発である。 米国の不干渉、お金での埋め合わせには限界 シリアの人道的危機に対するこれまでの米
アフリカから地中海を渡って欧州を目指す難民は後を絶たない。多くは経済が安定したドイツに亡命を希望する〔AFPBB News〕 シャーロッテ・ツァインドルマイヤーさんは外国人に何の反感も持っていない。経営している衣料品店では、湾岸諸国から来る大勢の裕福な客にサービスを提供してきた。だが、ドイツ・バイエルン州の村ヴィンデン・アム・アイグンの住民たちを不安にさせたのは、村に訪れることになっている亡命希望者の数だった。 人口800人のこの豊かな村のゲストハウスに、100人以上の亡命希望者が住むことになったのだ。 人口800人の村に難民100人 ゲストハウスから数軒先のコテージに暮らすツァインドルマイヤーさんは言う。「私たちは数について心配していました。800人の村に130人ですから。ガソリンスタンドを別にすれば、買い物に行く場所もありません。それに、もし大勢の若い男性が来たら、どうにかして忙しくさ
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