【「食べる」ことの歴史は、料理の技術とともに発展を遂げてきた。本連載では、毎回、料理にちなんだ動作をテーマに、その道具の歴史を追い、いかにして日本人が食べてきたのかを明らかにする】 「炊くもの」といえば、まっ先に思い浮かべるのが「ご飯」である。 お釜の蓋をパカッと開けたときに、ホワホワと立ちのぼる湯気。焼きたてのパンが放つバターや小麦の香りのように官能的で分かりやすくはないけれど、そこはかとなく漂うふくよかな芳香。いくらパン食が増えたからといって、あの控えめな香りによろめかない日本人は少ないんじゃないだろうか。 主食のご飯と結びつく「炊く」という行為。それは、きっと日本の台所で重要な位置を占めてきたに違いない。スイッチひとつで簡単に出来上がる炊飯器にたどりつく現在までに、どんな過程があったんだろうか。 そんなふうに考えて、「炊く」道具について調べることにしたわけだけれども、初っ端からつまず