宇部興産は、航空機エンジンへの採用に向け、量産と同じプロセスで高耐熱繊維「チラノ繊維」を生産する設備を整えた。高温領域のタービンで、ニッケル合金を代替して軽量化できる唯一の素材だ。この数年、世の中のニーズと同繊維を使いこなす技術がそろってきた。世界で2社しか作れない特殊な繊維の正体をひもとく。 化学カンパニー機能品事業部機能品営業部の中安哲夫部長は、「タービンを軽量化できるネタは、チラノ繊維のほかにはない」と話す。同繊維は炭化ケイ素(SiC)でできた繊維で、耐熱温度は1800度C以上、重さは金属の3分の1。 エンジン部材となる同繊維を骨組みにしたセラミック複合材料(CMC)は、耐熱温度は1400度C程度で、ニッケル合金より約300度C高い。軽量化や高温エンジンへの対応により、燃費を改善できる航空機エンジンの“ゲームチェンジャー”と目される。 現在、同社のチラノ繊維は顧客による認定作業が進む