タグ

病院と医療崩壊に関するI11のブックマーク (12)

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (1)わき出るドクター

    昨秋、高知医療センター(高知市池)の取材を始めて十一日目。大病院を象徴するような場面に出合った。夜間の救急外来に、医師がわき出るように次々と“出勤”してきたのだ。 発端は午後八時すぎ。郡部の病院から九十代後半の腸閉塞(へいそく)患者が転送されてきた。「不整脈もあり、心臓のペースメーカーの手術も必要かもしれない」という情報とともに。 救急車対応当直は整形外科の大森貴夫医師(35)だったため、消化器外科の待機当番医(47)が呼ばれた。彼は高知市の中心部で開催中の研究会に出席していたが、抜け出てきた。 百歳間近。手術に耐えられるかどうかを検討していると、やはり呼び出された循環器センターの当直医(45)が、心電図を見ていて叫んだ。 「MIや!」 心筋梗塞(こうそく)のことだ。救急外来はざわめいた。心疾患は命にかかわる。腸閉塞よりも心筋梗塞の解決が先だ。もし見落として腸の手術に入り、急変で

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (2)待ち疲れの整形

    「残業が一番長いのは心臓血管外科だけど、整形外科は独特の忙しさなんです」という高知医療センター脳神経外科、溝渕雅之医師(48)の言葉に興味をそそられ、私はまず整形外科を訪ねた。そしていきなりカルチャーショックを受けた。 というのは、トップの時岡孝光科長(48)が三十分間も時間を割いてくれたのだ。それまで見てきた脳外科はあまりに多忙で、質問することすらためらわれただけに、「こんなに長時間話してもらっていいのか」と気が引けたほどだ。 「七、八月だったら無理だったでしょうねえ。夜中も深夜も、土日も手術。うちは若手で緊急オペ専用のチームを組んで対応してるんですが、彼らは残業二百時間ペースでしたから。ところが、急に風向きが変わったんですよ」。痛しかゆしの表情で事情を話し始めた。 風向きが変わったのは昨年八月下旬。高知新聞朝刊社会面に「医療センター、救急患者殺到に悲鳴」という記事が出た。その途端

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (3)麻酔科“崩壊の夏”

    高知医療センターの麻酔科ナンバー2、難波健利医師(51)を見つけたのは午後七時すぎだった。目をしょぼしょぼさせて医局のソファで新聞を見ていた。 「待機なのに、三回目の徹夜ですからねえ。この二週間で」 前日は院内ICUの当直。この日は自宅待機だったが、また脳神経外科の手術で呼び出されていた。 「当は夕方で終わりだったんだけど。五時半ごろ脳外科から連絡があって、帰るに帰れずです」 横になると余計に疲れるので、眠気払いに新聞を読んで待っているのだという。 連続勤務は既に三十五時間。間もなく始まる脳動脈瘤(りゅう)の開頭手術は六時間ほどかかる。せっかくの休憩中に申し訳なかったが、整形外科で聞いた話を切り出した。 ―十八年の夏、麻酔科が“崩壊”したそうですね。 すると、ムッとした口調で言った。 「別に崩壊したわけじゃない。僕は『今日をもって、夜間の麻酔科の業務を停止します』と言った

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (4)9時間立ち続け

    「この手術の難易度はゴルフでいうとドライバーです。ちょっとぶれると、どうなるか。もちろん正確なショットで結果を出すのが、私たちのチームの義務。距離よりも方向性重視です」 高知医療センター心臓血管外科のトップ、岡部学部長(55)=循環器センター長=はこれから始まる手術の難しさを、そう例えた。この道三十一年。百戦錬磨だ。 心臓の付け根から首までの血管をすべて人工血管に付け替え、大動脈瘤(りゅう)を取り除く大手術。心臓手術では最高難度。センスと経験が問われ、トップクラスの医師しか手掛けられない。 心臓外科の手術数は年間約三百五十回。四国内ではトップ級。重症患者が集まってくるため、この手術も月に二、三回は行うという。 「頭と心臓への血流を止めるから、人工臓器をたくさん使います。両方の状況を把握しながら進めるから、管を何も入れるんです」 だからなのか。中央の手術台に向けて、あっちか

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (5)超多忙、苦にせず

  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (6)泥沼状態の日々

  • (1)燃え尽きそうや 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (1)燃え尽きそうや 高知医療センター(高知市池)に勤める脳神経外科医、溝渕雅之医師(48)と会ったのは平成十八年夏のことだった。 「燃え尽きそうなんやから。一カ月の時間外労働が二百時間近い。もう(子のいる)岡山に帰りますわ」 その十日ほど前、彼は辞表を出していた。 高知市出身、岡山大卒。米国に二年半留学。パーキンソン病関連の論文で博士号を取ったベテラン。大阪の救急病院にもいたから関西弁が交じる。 脳外科医として働く一方で、救命救急科にも属し、急患にも対応していた。それは彼の言葉によると「血で血を洗うような生活」だった。 「脳疾患以外の人も救急車やヘリコプターで次々来るんやから。交通事故や転落はもちろん、包丁で胸を刺されたとか、風呂でおぼれたとか、リストカット…」 昼間は複数の医師で対応するが、夜の救急車対応の当直医は一人。それであらゆる急患に対応するからきつい。ちなみに、

  • (2)疲労で起きられず 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (2)疲労で起きられず 一年半前、溝渕雅之医師(48)と最初に会った時の話に戻る。 ◇  ◇ 高知医療センターの救急外来は、他の病院が休みの週末が多忙になる。 「僕らはそれを『週末医療』と呼んでるんですけどね。次から次へ患者さんが来るから、もう、そこら中が大変。金曜日の朝からICU(集中治療室)のベッドをどんどん空けておかんと、満床で受け入れできんなってしまうんですから」 彼の一般外来担当は月曜。 「だから、土、日、月は必死ね。日曜日の夜間に救急車で八回呼ばれたりするから」 一睡もせず、そのまま朝から外来診察へ。患者さんを診ながら、ふっと意識が遠のいたこともあるそうだ。 救急車で来る患者のうち、最も多いのは心臓疾患で約30%。次いで脳卒中などの神経系が25%、さらに外傷の整形外科が続く。 心臓系の診療科も大変だが、「心疾患は心臓外科と循環器内科の両方が診るから、医師の数は

  • (3)後継者が激減 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (3)後継者が激減 自分の命を削って他人の命を救うような激務。高知医療センターの溝渕雅之医師(48)の話に驚きながら、素朴な疑問が浮かんだ。それほど寝不足で手術して大丈夫なのか。 「だってほかにおらんから。だから、僕は忘年会や歓送迎会も出ない。お酒飲むより、横になって体を休めた方がましなんです」と言って、こう例えた。 「車ならアクセル全開ですっ飛ばしてるようなもの。高速道路を百七十キロぐらいでずーっと飛ばし続けて、オーバーヒートして、シュルシュルシュル…となりそうな」 胃潰瘍(かいよう)や血圧の薬、安定剤をいくつも飲んでいるという。しかも、断り切れない学会発表や論文の締め切りもあり、さらに寝られない。 「コーヒーなんかもガブガブ飲む。週のうち、二日だった徹夜が四日になったら、もう持たんでしょう」 ―こうやってしゃべる時間ももったいない? 「そう。降り積もる雪みたいなもの。雪か

  • (4)“防波堤”崩壊 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (4)“防波堤”崩壊 一昨年の夏、溝渕雅之医師(48)が辞表を出した後、高知医療センター脳神経外科の医師は二人増えた。三カ月後に県内の民間病院で勤務していた大卒後七年目の女性医師が、さらに昨年四月には、自治医大を出て十二年間、県内で地域医療に携わった内科の認定医が「一番忙しい所で自分を試してみたい」と戦列に加わったのだ。 気を取り直した溝渕医師は辞表を取り下げた。 しかし、残業二百時間近い状況は一向に変わらなかった。なぜか。それは県東部の病院の脳外科が力を失ってしまったからだった。 その端緒は既に書いたように、平成十六年から始まった新卒医の新臨床研修制度だ。以前のように大学の医局に残らなくても、どこで研修してもよくなった。 「研修は好きな所で受けられるとなったら、若い人はやっぱり、都会に出て行きますよね」 それだけでは収まらなかった。「研修医が自由に勤め先を選べるのなら、自分ら

  • (5)想像超すヘリパワー 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (5)想像超すヘリパワー 高知医療センターの負担増に拍車を掛けたのは、ヘリコプターだった。 「室戸にヘリポートができたでしょ」と脳神経外科の溝渕雅之医師(48)。県立安芸病院から脳外科が消える直前、平成十八年二月のことだ。 「あのころから東部の急患が、どんどん来始めたんです。どこから来てるか聞いたら、救急車は安芸方面から。ヘリも、それまであまり来なかった室戸からの要請で、突然のように舞い降りてね。午前中だけで二回、室戸へ飛んだこともあったから」 高知医療センターの屋上にはヘリポートがある。遠方で重症患者が出ると、高知空港から高知医療センターへ飛んできたヘリに救急医が乗って現場へ直行。室戸なら二十五分で往復し、一階の救急外来へ直行する。 当然、救命率は上がるし、それまで救急車で一緒に付き添ってきた医師も、病院を何時間も留守にすることがなくなり、へき地医療にとっても恩恵は大きくなった

  • (6)既にデパート化!? 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (6)既にデパート化!? 県東部の脳神経外科の衰退と、ヘリ搬送の急増にあえぐ高知医療センター(高知医療センター)脳外科。溝渕雅之医師(48)はもう一つ、違う角度からの悩みも漏らした。 「救急病院のコンビニ化が問題だって言われてるじゃないですか。それはもう、ひと昔前の話。患者さんが要求しているのは夜も開いている専門店。『おにぎりじゃなくて、シェフの作りたてがべたい。夜中にわざわざ来たんだから』。そういう人が増えたんです」 例えば耳の調子が悪い患者に「当直医は外科です」と言うと、「じゃあ、耳鼻科の先生が来るまで待ちます」。自宅待機の当番医が呼び出されることになる。 「デパート化ですよ。夜中の救急処置なのに、何から何まで担当科の医師が呼ばれる。そんなことしてたら皆、へとへとになってしまうのに」 彼の話は高知医療センター全体を覆う疲弊感に広がった。 昨年九月、高知医療センターは当直体

  • 1