岸田文雄首相は、マイナンバーカードを使ったマイナ保険証への移行を進めるため、現行の健康保険証を予定通り来年秋に廃止すると表明した。しかし、国民の不安が払拭されたとは言い難い。現行保険証の廃止は撤回すべきだ。 マイナンバーを巡っては、公金受取口座などで誤登録が相次いだことを受け、政府は6月、マイナンバー情報総点検本部を設け、自治体などに点検を求めてきた。

イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの侵攻を巡り、即時停戦を求める国連安全保障理事会決議案が否決された。米国が拒否権を行使＝写真、共同・国連提供＝したためだが、人道的破局を回避するための国際社会の努力を踏みにじる暴挙である。日本政府は米国に翻意を促すべきだ。

発がん性が指摘される有害な有機フッ素化合物PFAS（ピーファス）が中部各地でも、井戸などから国の暫定目標値（50ナノグラム／リットル以下）を超えて検出されている。ただ国の動きは鈍く、検査も義務付けられていないため「氷山の一角」の可能性もある。国は速やかに健康への影響を見定め、規制など必要な措置を講ずるべきだ。 PFASは泡の消火剤や半導体製造、フライパン表面加工などに使われてきた。環境や人体に長く残り、PFASのうちPFOAなど3物質は日本も締結する国際条約で2009～22年にかけ順次、製造や使用が禁じられてきたが、05年以降、東京や沖縄の米軍基地周辺の井戸などで高濃度で検出された。国は20年、河川や水道水での「暫定目標値」を決めたが、それを超える検出が全国で相次ぐ。 愛知県豊山町では21年、自衛隊基地近くの配水場で検出され、配水停止を余儀なくされた。浜松市と岐阜県各務原市では同じく自衛隊

きょう8日は、1941（昭和16）年に日米戦争が始まった「開戦の日」です。なぜ破滅的な戦争に突き進んでいったのか。その原因の一つは、自由な言論が徐々に封殺されていったことにあると思わざるをえません。 今年8月15日「終戦の日」の本紙に掲載された「平和の俳句」です。川崎市の藤原日出さん（90）＝掲載時、以下同＝の作句。選者のいとうせいこうさんは「日中戦争でお父さまが戦死された時に六歳、弟四歳。その後も二度空襲にあい、生き延びてきた九十歳の一句」と記します。 本紙は今年も8月の1カ月間、平和の俳句30句を掲載しました。応募総数は昨年より524句多い6746句。昨年はロシアのウクライナ侵攻などで一昨年よりも3割増でしたので、読者の皆さんの平和を求める気持ちは、年々高まっているように感じます。

自民党安倍派が政治資金パーティー券を売った所属議員に販売ノルマ超過分を還流させ、派閥と議員双方の収支報告書に記載されていない総額が2022年までの5年間で1億円を超えることが分かった。還流分の不記載は継続的で事務的ミスでは済まされない。組織的に隠蔽（いんぺい）した「裏金づくり」と指摘されて当然だ。 二階派も所属議員がノルマを超え集めたパーティー券収入を派閥の収支報告書に記載していなかったとされ、東京地検特捜部は政治資金規正法違反（不記載・虚偽記入）容疑で両派の会計責任者らから任意で事情を聴いている。 過去に安倍派事務総長を務めた松野博一官房長官、西村康稔経済産業相はともに「政府の立場」を理由に説明を拒んだ。岸田文雄首相は党総裁として対応する考えを示したが、実態解明に積極的とは言い難い。もはや自民党には自浄能力を期待できない。パーティーを巡る政治資金の流れやパーティーを悪用した裏金づくりの実

文部科学相の承認を必要とし、財界など外部の参加を想定する会議に大学運営の強大な権限を持たせる内容で、大学の自治を崩壊させかねない。大学運営に政治介入の道を与えてはいけない。 改正案では、収入や学生数などの規模が大きい国立大学法人に対し、学長と3人以上の委員で構成する「運営方針会議」の設置を義務付ける。学長や役員会が担ってきた中期計画や予算、決算を決議する権限を持ち、学長に改善措置を要求したり、学長の選考や解任にも権限を持つという。

事務折衝後に取材に応じた選手会の森忠仁事務局長は「最後いろいろ、お話をさせてもらいました。楽天だけの問題ではないというところで、今後、１２球団でも調査して、何らかの対応をしていかないといけないですよねと（話をした）」と明かし、複数の相談窓口の設置などを検討していくよう話をしたという。 その相談窓口は「ＮＰＢに設けるのが一番いいかなと思いますけど、いくつかあってもいい。多ければ多いほど」。選手会で設けることも「これから議論してやっていきたい」と話す一方、「第三者の相談窓口があってもいいのではないですかという話をしました」とも語った。相談するときに、より話しやすい場があるよう「いろんな手段があった方がいいと思います」とした。今後、検討していく考えだ。

生理に伴う体調不良で公立高入試を欠席した場合、追試の対象に含めるよう、文部科学省は都道府県などに通知する方針だ。個人差はあるが、生理に伴う症状が深刻な人もいる。女性の健康に配慮して受験機会を保障することを、各自治体には求めたい。

石川県の馳浩知事＝写真＝が2021年に開かれた東京五輪の招致に向け、内閣官房報償費（機密費）を使って国際オリンピック委員会（IOC）委員に贈答品を渡したと述べた。 事実なら当時の安倍晋三内閣が買収を疑われかねない贈答を税金で行っていたことになる。政府は招致活動の実態、機密費の使途を国民に説明する必要がある。 馳氏は13年の開催決定まで、衆院議員として自民党東京五輪招致推進本部長を務め、開催都市の投票権を持つIOC委員105人全員に現役選手時代などの写真をまとめた1冊20万円のアルバムを贈ったと、17日の講演で語った。

日本企業が外国企業の許可を得て生産している武器を、ライセンス元の国に輸出できる方向になった。完成品の輸出はこれまで禁じられていたが、防衛装備品の輸出ルールに関する自民、公明両党の実務者協議で大筋合意した。 日本で生産された弾薬を米国や欧州に輸出すれば、米欧経由で紛争当事国のウクライナに供与される可能性は否定できず、間接的ながら日本が国際紛争を助長することになりかねない。武器輸出を厳しく制限してきた平和国家としての原則を堅持するよう求める。 自衛隊が保有するライセンス生産品には、米国の迎撃用地対空誘導弾パトリオット（PAC3）や地対空誘導弾「改良ホーク」、英国の弾薬などがある。米国はウクライナ支援で不足する武器・弾薬の輸出を日本に期待している。

2019年の参院選を巡る買収事件で、広島地裁は元市議らを有罪としつつ、「検事が不起訴を前提に取り調べたことは否定できない」と述べた。供述誘導を招かぬよう、任意段階も含めた取り調べ全過程の録音・録画が必要だ。 河井克行元法相（有罪確定）による参院選での買収事件では、地元政治家ら100人に計約2900万円が提供された。しかし、元市議らの取り調べに際し、検事が不起訴を示唆して自白調書に署名させた疑いが浮上した。 判決は、他の証拠から元市議らに罰金などの有罪判決を出す一方で、不起訴を前提にした検事の取り調べを「否定できない」とも述べた。取り調べが不適切だったと指弾したに等しく、検察は重く受け止めるべきである。

ポーランド下院選の結果、2015年以来続いてきた愛国主義を掲げる「法と正義」の政権から、自由や民主主義の重視を掲げるリベラル勢力による連立政権に交代する見通しとなった。

出生時の性と性自認とが異なるトランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるには生殖能力をなくす手術を必要とする法規定を、最高裁大法廷が「違憲」とした。危険を伴う手術要件はあまりにも過酷だ。人権を重んじた新たな性別変更のための手続き法が必要だ。

性的少数者の悩みや苦しみに思いを致した判断だといえよう。戸籍上の性別を変更するには、生殖能力をなくす手術が必要－とする性同一性障害特例法が、憲法違反かどうかが論点になった家事審判で、静岡家裁浜松支部は「同法の規定は憲法に違反し、無効」と判じ、申立人の浜松市、鈴木げんさん（48）＝写真＝の性別変更を認めた。弁護団によると、同法を巡る初の違憲判断だという。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの衝突で犠牲者が4千人を超えた。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに地上侵攻すれば、人道危機がさらに深刻化することは必至だ。即時停戦に向けて、国際社会は結束して介入すべきだ。

働き方は時代とともに変わりつつあるが、どんな働き方を選んでも、法的な保護が受けられ、安心できる就労環境が欠かせない。社会の変化に対応して働く人を守る制度への改善を進めたい。 インターネット通販大手アマゾンの下請け企業と荷物配送の業務委託契約を結んだフリーランスの男性＝写真（中）＝が配達中に負ったけがを巡り、労災保険法上の「労働者」と労働基準監督署が認め、休業補償の給付を決定した。

ともに夢を追った弟の挑戦を最後まで見守った。3日のプロ野球中日の今季最終戦で、堂上直倫内野手（35）が「8番・二塁」で先発出場し、現役生活を締めくくった。そのユニホーム姿を特別な思いで見つめていたのは、中日で一緒にプレーし、現在は球団職員の兄剛裕さん（38）。引退セレモニーで花束を手渡し「お疲れさま」とねぎらった。

国連教育科学文化機関（ユネスコ）世界遺産委員会が、長崎市の端島（はしま）（通称・軍艦島）＝写真＝を含む文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に関する日本の取り組みを認める決議を採択した。 朝鮮半島出身労働者に関する説明が不十分と指摘した2021年の決議から一転した形だが、韓国など関係国との対話の継続も促しており、日本政府は引き続き誠実な対応に努める必要がある。

カフカスの旧ソ連構成国であるアゼルバイジャンと隣国アルメニアが領有権を争うナゴルノカラバフ紛争は、軍事行動を起こしたアゼルバイジャンが勝利した。 ロシアのウクライナ侵攻という力による現状変更の試みが続く中で起きた衝突である。力の行使が蔓延（まんえん）する血なまぐさい世界にならないか、危惧せざるを得ない。 アゼルバイジャン領内にあるアルメニア人居住地域のナゴルノカラバフで、平和に共存していた両民族が衝突を起こしたのはソ連末期の1980年代のこと。90年代にアルメニア側が勝利し、アゼルバイジャン人は迫害を恐れてナゴルノカラバフを逃れた。

ノーベル平和賞を受賞したロシアの独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長＝写真、タス・共同＝を、プーチン政権が「外国の代理人」に指定した。 外国の代理人とはロシアでは欧米のスパイを意味する。目障りな存在の社会的信用を落とすとともに、圧力をかけて黙らせることを狙った常套（じょうとう）手段だ。ムラトフ氏は指定を不服とし、裁判で争う間は編集長を退く意向という。 当局はムラトフ氏を指定した理由を「内外政に否定的な意見を形成、拡散させることに参画した」としている。異論を唱える者をスパイ呼ばわりするのは、無辜（むこ）の民に「人民の敵」というレッテルを貼って大量処刑に血道を上げたスターリン時代を想起させる。