アリ・アスター監督の最新作「ミッドサマー」を見た。結論から言うと全然怖くはなかったし、特にグロテスクでもなかったし、エッチなシーンには謎のぼかしが入っていたのでエロティックな感じもしなかった。綺麗な映像と生々しくも気まずい人間関係が延々と続く、そういう類の映画である。その意味では、「フレンチアルプスで起きたこと」とか、そっちの方に近い作品であるかもしれない。 さて、本作の最も素朴な読解は家父長制社会と母権制社会の対立、あるいは自主自立という「男性原理」と、共感共振という「女性原理」の対立として読むというものだろう。実際、この映画の9割程度はこの読み方で理解することができるだろうし、そうしたレビューも多く見る。しかし、そのような素朴な読解は「ミッドサマー」という作品のもっとも根本的な問題を見逃しているように思える。本作を現代社会の冷たさに苦しんでいるダニーが、ホルガというコミューンによって救
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